今回試乗が叶った車は、シングルフレームグリルを纏ったアウディS4(V8)である。
まず今回試乗したV8モデルのS4とV6ターボエンジンを搭載していた以前のS4(2000年モデル)についてディメンション、車両重量、動力性能面、価格面及び燃費等を比較してみた。(下表1&2参照)
1.ディメンション及び車両重量比較
項目 |
A |
B |
差(A-B) |
Audi S4
(V8) |
Audi S4
(V6 turbo) |
全長(mm) |
4585 |
4495 |
+90 |
全幅(mm) |
1780 |
1735 |
+45 |
全高(mm) |
1410 |
1410 |
±0 |
ホイールベース(mm) |
2645 |
2605 |
+40 |
トレッド前/後(mm) |
1510/1505 |
1495/1475 |
+15/+30 |
車両重量(Kg) |
1750 |
1590 |
+160 |
NOTE)表記の数値はV6 turbo;01/1時点、V8;05/2時点のメーカー公表値
V8モデルでは全高を除く各ディメンションが拡大され、車両重量は160Kg増加した。やや気になる+160Kgの重量増加だが、BMW5シリーズを参考にすると6気筒530i(最新バルブトロニック仕様)とV8搭載の545iとの重量差は140Kgあり、やや乱暴な見方になるがS4(V8)の+160Kgは、ディメンションの拡大分を考慮すれば、納得出来る数値だ。
2.動力性能面、価格面及び燃費比較
車種 |
動力性能面 |
価格面 |
.燃費
(km/L) |
A
重量/馬力
(Kg/PS) |
B
重量/トルク
(Kg/Kg.m) |
C
A×B
(Kg2/PS・Kg.m) |
価格/リッター
(¥/L) |
価格/馬力
(¥/PS) |
Audi S4(V8) |
5.09 |
41.87 |
213 |
1,848,484 |
22,370 |
7.3 |
Audi S4(V6 turbo) |
6.00 |
38.97 |
234 |
2,723,699 |
27,453 |
8.4 |
NOTE) |
1.表記の燃費値はV6 turbo;01/1時点、V8;05/2時点のメーカー公表値
2.燃費値を除く表記の数値はV6 turbo;01/1時点、V8;05/2時点のメーカー公表値を用いた計算値 |
1)動力性能面を見るとトルク当たり重量(B)がV8モデルでは約7.4%増加しているが、馬力当たり重量(A)では、V8大排気量化による馬力アップ(265PS⇒344PS
29.8%up)が重量増加分(1590Kg⇒1750Kg 10%up)を抑え込み約15.2%減少した。上表C値(動力性能の一つの指標)で比較すると結果的にはV8モデルの方が約9%低められ、V6turboモデルより優位だ。
2)リッター当たり価格及び馬力当たり価格で見るとV8モデルの方がお買い得感が高い。
3)燃費は、動力性能面のアップ(約+9%)に対して約13%ダウン。
エクステリア
ご多分に漏れず、V8 S4にもアウディであることを誇示する為の”シングルフレームグリル”が奢られた。この有無を言わさぬ手法にはいささか違和感を覚えるが、アウディブランドを誇示する為の策として素直に受け入れざるを得ないといったところだ。
さて、A4に対しての差別化は、フロント&リヤバンパー、カラードドアアンダープロテクター(サイド)、リヤスポイラー(トランク一体型)、S4エンブレム(フロント&リヤ)、アルミ調ドアミラー、アーヴスデザイン18インチ・キャストアルミニウムホイール、デュアルテールパイプ(両サイド)などで大袈裟にその存在をアピールするものではない。ここは、闘士を内に秘めたアウディらしい演出だ。
インテリア
インテリア全体から受ける印象は、上質で緻密で精緻なつくり込みだ。こういった空間に身を置くとシートのよさも手伝って、なんともいえぬ心地よさが感性を刺激する。S4を如何なる場面においても冷静に扱うための空間として最適であると主張しているようだ。
さてA4との主な相違点は、タコメーターレッドゾーン6500rpm〜⇒7000rpm〜、タコメーター内にS4エンブレム、右側のスピードメーター260Km/hフルスケール⇒280Km/hフルスケール、デコラティブパネル;アルミニウムパネルまたはウッドパネル(3.2L)⇒カーボンパネル、ステアリング;4本スポーク⇒3本スポーク(S4エンブレム付)、シート;スタンダード⇒レカロスポーツシートなどで、スカッフプレートのS4エンブレムがS4であることを静かに主張している。
BMW M3との比較
参考までにディメンション、動力性能面、価格面及び燃費等をBMW M3と比較した。(下表参照)
車種 |
外観寸法 |
動力性能面 |
価格面 |
.燃費
(km/L) |
全長
(mm) |
全幅
(mm) |
全高
(mm) |
A
重量/馬力
(Kg/PS) |
B
重量/トルク
(Kg/Kg.m) |
C
A×B
(Kg2/PS・Kg.m) |
価格/リッター
(¥/L) |
価格/馬力
(¥/PS) |
Audi S4(V8) |
4585 |
1780 |
1410 |
5.09 |
41.87 |
213 |
1,848,484 |
22,370 |
7.3 |
BMW M3
(SMGU) |
4490 |
1780 |
1370 |
4.55 |
41.94 |
191 |
2,671,216 |
25,271
|
8.3 |
NOTE) |
1.表記の数値はAudi S4(05/2時点)、BMW M3(05/1時点)の各メーカー公表値を用いた計算値である。(外観寸法及び燃費は、公表値を記載)
2.価格面の各数値の算出に当たっては消費税を含まない車両本体価格を用いた。(Audi
S4の場合、車両本体価格について消費税込みの価格だけを公表している為、消費税5%を除いた額をベースとして算出した。) |
動力性能面を上表C値(動力性能の一つの指標)で比較すると、BMW M3(SMGU)が数値の上では約11%強優っている。
価格面ではリッター当たり価格&馬力当たり価格ともAudi S4が優位である。相手が手強いM3(SMGU)ではあるが、V8+クワトロシステムで武装したAudi
S4の価格面での優位性は、大いに評価出来る。
燃費については、V8大排気量+クワトロシステムのAudi S4(M3に対して、車両重量+190Kg)には分が悪い。
このページの先頭に戻る
ROAD IMPRESSION(アウディS4(V8)・ロードインプレッション)
アウディのSシリーズの中ではS3とS6に試乗したことがある(残念ながらインプレッションとしては、纏めていない。)が、Sの称号が与えられたアウディの乗り味は、一般グレードのAシリーズには失礼だが明らかに一線を画す五感にビシビシと訴えてくるものだ。
そして、今回試乗したV8を搭載したS4はどうか?やはりSは違う!というのが第一印象である。それも走り出した瞬間に・・・100m程度転がしただけで・・・私の五感にビシビシとその心地よさが伝わってきた。走り出してすぐに素晴らしいと感じた車は、PORSCHE
911が最右翼だがこのS4も負けてはいない。
まず五感に訴えてくる何とも素晴らしい乗り味からお話ししたい。このS4は、凹凸の大小、そしてそこを通過する際の速度に依存することなくどこを走行しても(限られた試乗コースゆえ、もちろん路面状況は限定されることは了承願いたい。)しっかり感(がっしりとした塊り感)を伴いかつ、やさしくまろやかな節度感のある懐の深い乗り味を提供してくれるのである。さて、こういったサスペンションを介してドライバーに伝達される巧みな節度感については、折にふれ試乗記でお話しているが、重要なのはいかに心地よい節度感のみを残してドライバーに伝達するか(この考え方は、”街の試乗屋”の勝手な定義であることをお断りしておく。)だが、アウディS4(V8)は、理想的な姿でそれを達成していると思うのである。この手の車はシートに腰掛、ただ単に停車しているだけでも心地良いのである。そう思わせる理由は、シートの出来、サスペンションの出来、ボディー剛性などそのすべてが五感を刺激するからだろう。アウディS4(V8)は、上述した理想的な足回りにより路面との巧みな対話感が生み出され、例え30Km/h〜40Km/hの低速度であってもドライバーに無類の昂揚感をもたらすのである。こういった路面との巧みな対話感は、車好きなドライバーを刺激して止まない。
こういった味わい深い乗りごこちのよさは、特別なSの称号を与えられたアウディS4(V8)のみの特権といえよう。しかしながらこういった良いものに触れることは己の感性を高め、更なる心地よさの有り方を探る意味において大いに意義深いものだ。
次にアウディS4(V8)の6ATトランスミッションについてだが、とにかくスムーズで変速ショックは見事なまでに消されている。Dレンジ固定のままでもアクセルに呼応したウルトラスムーズな加速感が全く違和感なく極めて容易に手に入るのである。ティプトロニック(マニュアルモード)による変速フィールは、up&down共にレスポンスは実に鋭く、キビキビした軽快なドライビングが楽しめる。また一般的なATに見られがちなすべり感とは無縁でダイレクト感のあるフィールが得られるのもうれしい。やや気持ちがハイになっていたことが要因でステアリングに設けられたパドルスイッチでの変速操作を試すことを忘れてしまったのだが、ATレバーでの軽快なレスポンスから推測すれば、さらにアクティブなレスポンスが期待できることは確実だ。とにかくこの6ATの完成度は非常に高く、非の打ち所がないとはまさにこのことだ。
ステアフィールだが、カタログにはA6と同様の”サーボトロニック速度感応式ステアリング”と謳ってあるが、操舵力は、A6のような軽すぎるフィールではなく適度な重さ感であった。角速度を速めたときのレスポンスも足のツキがよく非常に安心感が高い印象だ。単に唐突に向きが変わるというのではなく、素早いが地に足が着いた印象だ。また、どの速度域(といっても試乗コースゆえ限られるが・・・。)からステアリングを操作してもドライバーの意思に忠実にレスポンスしてくれるし、頼りがいもあるのでステア操作自体に安心感と楽しさの両方が内包されている感じなのだ。ステアリングのアシスト量は、まさにドンピシャリでステアしている感じが一定の重さ感でステアリングフィールもまた精緻華麗な印象だ。
アクセルワークについては、アクセル開度にダイレクトに応えてくれるのだが加速フィールは、どの速度域からでも車を唐突に加速させるものではない。あくまでもその振る舞いは精緻華麗で滑らかさを忘れないものだ。344馬力のスペックを誇示する車でありながら同乗者には優しい加速感なのである。これはメカ的なV8によるところとサスペンション、ボディー剛性及び加速のさせ方の緻密なプログラミングによるトータルバランスによって生み出されたものであろう。この精緻華麗な加速感もまたドライバーに笑みをもたらす。まさにアクセルワークと車の反応がドライバーの意識と合体し、限りなく五感を刺激するのだ。
エンジン音は低く抑えられているが、このエンジン音にはドライバーを心地よく刺激するメカニカルなV8サウンドを聞かせてくれるというなんとも心憎い演出が織り込まれているのだ。アクセル操作とV8サウンドとの一体感がファントゥドライブの世界へとドライバーを誘う。
ブレーキフィールは、1750Kgもの車重をしっかりと受け止めてくれるコントロール性の高いブレーキフィールだ。ノーズダイブは当然ながら感じられず、車全体が地に根を下ろしているが如くに停止するのだ。高速度で走行する車は、こうでなければという優等生ぶりを示してくれた。このブレーキフィールをもってすれば、街中で”安全に速く”泳ぎ回ることは容易だ。
最後にコーナリングフィールについて少し触れておくが、当たり前ではあるが、街中で少々無理なドライビングを試みてもS4の懐の深さをおいそれと知ることなど出来ない。ロール感とは無縁なフィールとだけ申し上げておくことにする。出来るならば、夢のS4(V8)を手に入れ、その限界を探ってみたい誘惑に駆られたことは言うまでもない。
総合評価
S4(V8)は、フォルムはセダンであるが、とにかく並のセダンとは明らかに一線を画す車であり、ライバルを探すことを難しくする唯一無二の存在という感を強くした。
そして、アウディS4(V8)という車の完成度の高さに大いなる感動を覚えたことを報告しておきたい。要するに車としての立居振舞のすべてが、精緻華麗であり、まさに非の打ち所がないのである。(05.8時点に於ける”街の試乗屋”の見解であることをお断りしておく!?)
|