V35 SKYLINEの登場は、巷で賛否両論を巻き起こしたわけだが、良しにつけ悪しきにつけセンセーショ
ナルな話題を提供したことには疑う余地が無い。そして、ネクストスカイラインへの新たな期待感(日産への期待感)を膨らませる起爆剤になったことも又、事実であった。このような背景の中、日産は、V35SKYLINE
350GT-8を新たに投入したのである。
350GT-8には、世界初8段変速パドルシフト+エクストロイドCVTが搭載された。このパドルシフトは、ステアリングの両側に配置され、パドルを手前に引くことによりシフトアップ、シフトダウンが可能だ。(右:シフトアップ、左:シフトダウン)このパドルの位置は固定で、ステアリングとは同期しない。又、シフトチェンジは、シフトレバーでもOKだ。(プッシュ:シフトアップ、プル:シフトダウン)
世界に先駆けて実用化したエクストロイドCVTは、セドリック&グロリアに搭載されたが、これを開発するに当たっての苦労話がテレビ(NHK)で放映された。ご存知の方も多いことと思うが、この中で解決しなければならない大きな課題としてパワーローラ&ディスクの材質、パワーローラとディスクに介在させる最適なオイルの2点が挙げられていた。パワーローラ&ディスクの材質には当時製法上困難とされた限りなく不純物を取り除いた純鉄が採用され、耐久性の課題をクリヤーしたという。又、パワーローラーとディスクに介在させるオイルには、非接触状態を保つという物理的に困難とされた課題をクリヤーしたものが採用された。さらにこのオイルには耐久性を左右するもう一つの難課題となったオイルと純鉄との相性をも考慮されているという。これらの超難題を解決に導いた技術屋さんの努力の過程は、単純な言葉ではとても表現できないものだろう。こうして難産の末誕生したエクストロイドCVTに更に8段変速パドルシフトを搭載したV35SKYLINE
350GT-8は、正に『技術の日産』を象徴するマシンと言える。
さて、300GTとの相違点は、ユーロチューンドサスペンション、高性能ブレーキパッド+高剛性ブレーキローター+VDC(ビークルダイナミクスコントロール)、エクステリア上ではテール右下のロゴ、キセノンヘッドランプのインナーパネルとラジエーターグリルのスモークメッキ化、ユーロチューンドサスペンション専用タイヤ、レイズ製アルミホイールである。エクステリア上の差別化は、実にさり気ないが、個人的には好ましい。インテリアではチタン調センタークラスター、ファイングリップタイプ本革巻スポーツステアリング、本革巻パドルシフト、アルミペダル(アクセル,ブレーキ)が奢られた。
チタン調センタークラスターの採用は、インテリアにスパイスが加わったと言う感じで、無機質と称したインテリアを一掃する程のインパクトがあった。
その他に350GT-8には、ミッションオイルクーラー(空冷式)、盗難防止の為のイモビライザーが標準装備されている。
350GT-8の車両本体価格は、\3,660,000(02/1メーカー公表価格)である。
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ROAD IMPRESSION
ファーストインプレッションで“凄い”と感じさせてくれる車は、そう多くは無い。このせりふは、V35スカイラインのカタログからの抜粋であるが、350GT-8に限って言えば、正に的を得たフレーズとなった。
250GT、300GTでは決して味わうことが出来ない350GT-8の世界がそこにあった。
パドルシフトによる体感加速は、あたかもターボが装着されていると錯覚しそうなほどに強烈だ。この様に感じさせる理由は、恐らく低回転からトルクが盛り上がるエンジン特性によると思われるが、それにしても300GTとの加速感とは隔絶の感がある。シートリクライニングの角度を途中でねかせたくなるほどに体感加速は鋭いと報告しておく。
街中ではスロットルを普通に開けていても下手をすると2速で合法スピードに達してしまうことは充分ありうることで、3速以上入れることなく次の信号で停止することになる。8速あるから早速すべて使ってみようというのが人情と言うものだ!などと屁理屈にもならない思いで試してみたが、市街地走行程度のスピードでは6速以上は、拒否されてしまったのである。確かに5M-ATxのギヤ比と比較するとトップギヤで約20%高められていたので、うなずける結果ではあるが、逆に8速ギヤを使用しての高速走行は、トルクフルなエンジン特性によりリミッタ-速度に達することは容易であろう。くれぐれもオーナーになられる方は、覆面パトさん等にはご注意くださいと申し上げておく。
さて、乗り味であるがV35の売りである正に『フラットライド』を体感できるものに仕上がっていた。
250GTと300GTでは確かにフラット感は、あるもののステアリングインフォメーションが明らかに不足していたし、凹凸のいなし方も中途半端で頼りない感じがあったが、こと350GT-8ではこれらすべてが満足のいく方向に躾けられていたのである。フラット感を残しつつ、ドライバーへのインフォメーションを分かりやすくしたセッティングには大変好感が持てる。個人的には、250GT、300GTにもこの乗り味を提供すべきと思うのだが・・・。
ブレーキのフィーリングは、ことさらに止まることを意識する必要はなくじわりと効く。これも○である。
一点、変速時のフィーリングについて触れておくとCVTではあるが変速したと分かる節度感を伴う。大変贅沢な要求であるが、もう少し滑らかに繋がるとフラットライドとの相乗効果で更に気持ちの良いドライビングの世界へと導かれることになろう。
350GT-8は、今までの日本車の中ではなかなか得られなかった乗り味の世界を語れる車なのである。これでようやくBMWとの乗り味比べが実現することになったことは、うれしい限りではないか。350GT-8の乗り味は、BMW
M-sportのねちっとした味(もちろんBMW M-sportの味は、なかなか巧妙だ。)とは異なったさらっとした中に芯が一本通っているもので、これはBMW
M-sportとは違った独自の乗り味と言えるものだ。
最後に最近発売されたMARCHそして今回試乗した350GT-8を通して、日産のもつ本来の技術力が各セクションの壁を越えてようやく同一ベクトル方向に結集することが出来るようになってきたのではないかと感じる。こういった意味合いから、まもなく登場するZ、そして、まだ全貌が明らかではないGTR、この2台からは目が離せない。発売が待ち遠しい限りである。
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