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July.2005

VOLKSWAGEN GOLF GTI IMPRESSION
(フォルクスワーゲンゴルフGTI 試乗インプレッション)


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今回試乗した車は、フォルクスワーゲン ゴルフ(D)GTIである。フォルクスワーゲンはこの車を『甦った伝説のホットハッチ、GTI』"GTI is back."と謳う。この言葉に込められたフォルクスワーゲン社のGTIに対する熱き想いを感じずにはいられない。だが、なぜ"GTI is back."なのか?情の部分ではなく、数値的にはどうなのか?歴代GTIの主に動力性能に関する諸元を睨みながら、暫し考えてみた。
(下表1.参照)



表1. (歴代GTI;動力性能に関する主な諸元)
No. エンジン
(バルブ数/1気筒)
ボア×ストローク
(mm)
排気量
(cc)
最大出力
(PS)
最大トルク
(Kg.m)
馬力当たり重量
(Kg/PS)
トルク当たり重量
Kg/Kg.m)
トランス
ミッション
車両重量
(kg)
T 4気筒SOHC
(2)
79.5×80.0 1588 110 14.0 7.4 57.9 5MT 810
U 4気筒DOHC
(4)
81.0×86.4 1780 125 17.1 8.5 62.0 5MT 1060
V 4気筒DOHC
(4)
82.5×92.8 1984 145 18.3 8.3 65.6 5MT 1200
W 4気筒DOHC
(5)
Turbo
81.0×86.4 1780 150 21.4 8.5 59.3 5MT 1270
D 4気筒DOHC
(4)
FSI Turbo
82.5×92.8 1984 200 28.6 7.2
(7.3)
50.4
(51.0)
6MT
(DSG)
1440
(1460)
NOTE)車両重量:初代 3ドア、U〜X 5ドア

1)"GTI is back."を裏付ける数値としてまず見えてきたのは、馬力当たり重量を歴代モデル(T〜W)の中では最も優れた数値であった初代モデルのもの(
7.4Kg/PS)と同等以上としたことだ。
今回のモデルXでは、6MTで
7.2Kg/PS、DSG(Direct Shift Gearbox)仕様で7.3Kg/PSを達成している。歴代モデルU〜Wの馬力当たり重量は、いずれも初代モデルを下回る8.3Kg/PS〜8.5Kg/PSであった。

2)トルク当たり重量に関しても歴代モデル(T〜W)の中でトップの数値であった初代モデル(
57.9Kg/Kg.m)に対して更に約13%高められている。
今回のモデルXでは、6MTで50.4Kg/Kg.m、DSG仕様で51.0Kg/Kg.mを達成している。
歴代モデルU〜Wのトルク当たり重量は、いずれも初代モデルを下回る
59.3Kg/Kg.m〜65.6Kg/Kg.mであった。

ここでもう一点着目してみたのが各歴代ゴルフの中でのノーマルグレードとの最高出力の差だ。
つまりGTIというグレードがエンジン出力の上でどの程度特別な存在と位置付けられて来たのか?各歴代毎のグレード別最高出力を比較してみることにした。(下表2.参照)

表2. (歴代Golf;GTI&ノーマルグレード最高出力比較)
No. グレード 排気量 ターボ有無 最高出力
(PS)
A/B
T A GTI 1588 110 1.34
B GLE 1588 82
U A GTI 1780 125 1.19
B GLi 1780 110
V A GTI 1984 145 1.26
B GLi 1984 115
W A GTI 1780 150 1.29
B GLi 1984 116
X A GTI 1984 200 1.33
B GLi 1984 150

上表2.よりノーマルグレードとの差別化が最も顕著に見られるのは、
初代モデルの34%upで、今回のモデルXは、33%upとほぼ同等であった。今回のモデルVもまた初代モデルで見られたGTIへの特別な想いをこの差別化の数値から感じとることが出来る。
歴代モデルU〜Wのノーマルグレードに対する差別化の数値は、19%up〜29%upで、何れも初代モデルよりも低いレベルにあった。
以上、上記1.&2.表から半ば強引に導き出した数値上の結果から言えば、今回のモデルX (GTI)は、初代GTIの熱き情熱を彷彿させ、かつそれを超えるマシン、すなわちフォルクスワーゲンのいう"GTI is back"のフレーズに相応しいモデルといえそうだ。

エクステリア
GOLF X GTIのノーマルゴルフとは一線を画したエクステリア(ハニカムラジエーターグリル&レッドモール、フロント&リアスポイラー、サイドシルパネル、7.5J×17インチアルミホイール、レッドブレーキキャリパー等で差別化)は、自信に満ちている。こうした性能に裏打ちされた差別化には1本筋が通ったものが感じられ、好感が持てる。
フォルクスワーゲンが謳う"GTI is back"の命を受けた特別なフォルムを纏ったGTIは、Golf GTIの往年の名声を呼び覚まし、改めてその存在を知らしめることになるだろう。
ボディーカラーだがGTIで選択できるのは、キャンディホワイト、トルネードレッド、ブラックマジックパールエフェクト、リフレックスシルバーメタリックの4色だ。購入する方は、大いに悩まれるのではないだろうかと勝手な想像をしてみた。ホワイトはGTI専用色ゆえGTIへの拘りを表現したカラー、レッドはGTIの熱き情熱を外界へ向けて発進するカラー、ブラックは、レッドとは逆に情熱をさらりと内に秘めた大人のテイストが感じられ、オールブラックゆえに逆にフロントマスクのレッドモールがGTIであることを誇示してくれる。唯一リフレックスシルバーメタリックについては、GTIらしさを表現するにはおとなし過ぎるかもしれない。
いずれにしてもGolf V GTIを購入する方にとってボディーカラーの選択は嬉しい悩みであり、これはオーナー目前の至福のひと時ではないだろうか。

インテリア

GTI専用装備は、アルミ&レザーステアリング(180°位置を1部フラット化&グリップ形状にも拘ったGTIロゴ入り)、レザー&アルミシフトノブ、赤と白で構成されたチェック柄のスポーツシート(オプション;ブラックレザースポーツシートでヘッドレスト部にGTIロゴ入り)、メータークラスター、アルミペダル(アクセル,ブレーキ,クラッチ<6MT車のみ>)などで、GTIであることを静かに主張しているといった感じだ。これらのGTI専用部品のなかで特にステアリング、スポーツシート、アルミペダルからは、単なる差別化という概念ではなく、GTIとしての拘りと機能性を純粋に追求したことが伝わって来る。GTIに惚れ込んだ人間ならば、この手法を理解し胸を躍らせることだろう。
往年のGTIを彷彿させる赤と白のチェック柄のシートを選択するか?オプションのGTIロゴ入りのレザーシートを選択するか?なかなか悩ましい。これもまたオーナーになる方の嬉しい迷いを誘いそうだ。

AudiA3 FSI sportとの比較(参考)
参考までに4気筒FSIエンジン搭載車であるAudiA3 FSI sportとディメンション、動力性能面、価格面についてGolf GTI(DSG仕様)と比較してみた。(下表参照)

車種 外観寸法 動力性能面 価格面
全長
(mm)
全幅
(mm)
全高
(mm)
A
馬力当たり重量
(Kg/PS)
B
トルク当たり重量
(Kg/Kg.m)
C
A×B
(Kg2/PS・Kg.m)
リッター当たり価格
(¥/L)
馬力当たり価格
(¥/PS)
Golf GTI
(DSG)
4225 1760 1460 7.30 51.05 373 1,612,903 16,000
Audi A3
FSI sport
4215 1765 1415 9.27 68.14 632 1,665,707 22,032
NOTE) 1.表記の数値はGolf GTI(05/5時点)、Audi A3(04/8時点)の各メーカー公表値
2.価格面の各数値の算出に当たっては消費税を含まない車両本体価格を用いた。(Audi A3の場合、車両本体価格が消費税込みとなっている為、消費税5%を除いた額をベースとして算出した。)

上表の動力性能面での一つのみかけの指標であるC値は、Golf GTI(DSG)がターボ仕様であるから当然ではあるが、Audi A3 FSI sportよりも約69%優れた数値となっている。
次にリッター当たり価格、馬力当たり価格を見るといづれの数値もGolf GTI(DSG)がAudi A3 FSI sportを凌駕していることが分かる。特に馬力当たり価格において顕著であり、Audi A3 FSI sportの車両本体価格のあり方を疑ってしまうほどだ。さらに言えば、Audi A3 FSI sportのトランスミッションは、DSG(ダイレクト・シフト・ギヤボックス)ではなく通常のティプトロニック6AT仕様だ。この比較結果の数値を見る限り、Golf GTI(DSG)のコストパフォーマンスは、非常に高いといえる。

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ROAD IMPRESSION(ゴルフGTIロードインプレッション)
試乗したGTIのシートは、標準装備の赤と白のチェック柄のGTI専用スポーツシートで、適度な硬さがあり着座感は、良好だ。またこのGTI専用スポーツシートは、腰部のホールド性にも配慮が見られ、これも大変好ましく感じた。そう長くはない試乗時間内での評価となるが、シートの存在を忘れるほどに極自然に体にフィットするグッドな感触なのである。個人的にドイツ系のシートが生理的にあっているのかもしれないが・・・。
さて、試乗したGolf V GTIに装着されていた前評判の高いDSG(ダイレクトシフトギヤボックス)について紙面を割いてお話しよう。個人的にはアルファのセレスピードとどのようにフィーリング面で違うのかが興味津津であった。まずシフトアップ時にセレスピードであれば、アクセルを僅かに戻してやらないと車が一瞬失速した感じになるのだが、DSGの場合は、アクセルを戻す配慮は無用で、アクセル踏みっぱなしのままで、スムーズなシフトアップがいとも簡単に手に入るのだ。ここでスムーズなシフトアップといったが、僅かに節度感が残されており、これはツインクラッチを持つDSGなれどロボットMTだ!と思わせるところが、個人的には機械臭さが残っていて好きだ。逆にこういった節度感は、ドライバーに適度な昂揚感をもたらし、やんちゃなGTIのドライビングを楽しいものにしてくれる。(誤解されるといけないので、補足するが、ここで言う節度感というのは、ギクシャク感とは全く別物で、洗練された接続感をいう。)
ここで少し街の試乗屋の戯言をいわせていただくが、ロボットMTは、クラッチを用いるわけだから、構造上僅かな節度感は残ると考えた方が自然で、CVTの如くロボットMTを限りなくスムーズにして、僅かな節度感まで排除することには賛成出来ないのである。要は、CVTもロボットMTも構造上の特性を生かした物作りが望ましいということを言いたいのである。CVTはその特性を生かして限りなくスムーズであって欲しいわけで、CVTという構造を取りながら故意に人工的に節度感を作り出すことには賛成できないのである。
さて話を戻すが、発進時の加速感についていえば、アクセルを例によって6〜7割程度に踏み込んだ感じだが、一瞬の"Thinking time"を経て加速体制に入っていく感じなのだ。この一瞬の間は、DSGといえどもなくせなかったということだ。しかしながら、"Thinking time"を経た後には、ドライバーに心地良い僅かな節度感を伝えながら、スムーズかつ素早いシフトアップにより実に気持ちの良いリニアな加速感が味わえるのである。気が付くと法定速度+α!?に達しているといった具合だ。
次にDSGをマニュアルで操作してみた。Dレンジポジションからシフトレバーを左に倒し、シフトレバーをプッシュするとシフトアップ、プルでシフトダウンだ。シフトアップもシフトダウンも一瞬にして作業は完了する。シフトダウン時のブリッピング音は、アルファのセレスピードのように派手に聞かせるタイプのものではない。恐らく必要な時に必要な量だけアクセルが開けられているためと推測したのだが、例えば5速で低速走行時に4速へのシフトダウンを試みてもブリッピング音を聞かせてはくれないのだ。故意に聞きたければ、3速で約60Km/h程度から2速にシフトダウンするとなるほどブリッピングしてくれていると納得するが、その音量は実に控えめだ。ブリッピング一つとってもドイツ車らしく理詰めで緻密にプログラミングされているといった感じだ。 マニュアルモード時で一つ気になったことは、1速からアクセルを深めに開けて2速へシフトレバーを操作した時に、躊躇したようにギクシャク感を感じる場面に遭遇したことだ。DSGといえども完璧ではないと思わせる場面ではあったが、このギクシャク感は試乗中ではこの一度だけだった。丁度いやなシフトスケジュールに当たったのかもしれないが、気になるところではある。
次にDレンジの下にあるSモードについてだが、このSモードは、市街地をキビキビと走らせたいときには打ってつけだ。あくまで私的な感覚でいえば、Dレンジに比べてアクセルレスポンスが2割強UPする感じだ。又、Sモードでは、次の加速体制に移るためのシフトダウンもドライバーの意志が通じたかのように巧みにやってのけるのである。この技をもってすれば、比較的混んだ市街地であってもGTIを生き生きと走らせることが出来る。
ここでアクセルレスポンスについて改めて述べるが、車が動き出してからのアクセルワークに対するレスポンスは、何処から踏み込んでも湧き上がるスムーズな加速が手に入るといった好フィーリングだ。この刺激は、とげとげとした尖がったものではなく、上質な味だ。このように感じさせるのは、2.0FSIターボエンジンの吹け上がりフィールによるところが大きい。このターボエンジンは、一般のターボエンジンにありがちな加速時の段付は、全く感じられず、アクセルワークに対するエンジンの回転上昇は、極めてリニアだ。
エンジン音についてだが、1速で5000rpm近辺まで回してみた時の音は、ややメカニカルノイズを伴い室内に比較的侵入してくるのだが、嫌味な音ではなく、むしろDSGによる小気味の良い加速感と相まって、なかなか刺激的だ。
ステアフィールは、総じて精緻な印象で、電動パワステの完成度が非常に高いと感じさせるものであった。中立付近の操作感も軽からず重からずといった感じで、実にうまいセッティングだ。直進時に気を使う必要もない。角速度を速めてみたが、レスポンスは鋭くアシストに違和感は皆無だ。こうした角速度を速めた時の鋭いステアフィールは、やんちゃなGTIにはよく似合う。
ブレーキフィールもまた、素晴らしいものであった。ブレーキのタッチは、カッチリとした剛性感のあるフィールで街中での合法スピード+α?の速度域程度からでは何事もないかのように極自然に停止することが出来る。極自然といったが、ブレーキング時に同乗者に不快感を与えることがなく、なめらかにしっかりと停止させることが、ことさら気を使うことがなく出来る非常にコントロール性に優れたブレーキフィールなのである。また停止時における不快なノーズダイブは、一切感じられずサスペンションのしつけのよさを感じたことも付け加えておきたい。
乗り味についていえば、非常にソリッド感のあるもので、車全体が引き締まっている感じを受けた。このような表現をすると単に硬い乗り味ではないのか?と思う方もいらっしゃるでしょうが、実際の乗り心地は、実に洗練されたものだ。試乗コースは、確かに凹凸の少ない舗装路であったが、フラット感の高い乗り味、つまり地に足が着いているという感覚を伴うもので、ボディー剛性が高く、かつ足がよく仕事をしているということが伝わってきて、直進させているだけであっても乗り味の心地よさを感じることができるのである。確かに凹凸大のところを低速で通過する際には、硬めの足であることをドライバーに伝えてくるが、走ることをこよなく愛する車好きであれば、しっかり感があり心地よいと捉えると思う。単に著名な日本車からの乗り換え組の方からは、単に硬いと捉えられてしまうことは大いにありうると想像する。凹凸の大きなうねりを伴ったところを約80Km/hで通過した際には、意外にサスペンションストロークがあり信頼できる足まわりであることを感じさせてくれた。速度と路面状況による車への入力は、千差万別であるから簡単に評価を下すことは出来ないが、比較的荒れた路面状況下を速度を上げて走行する場合であっても路面の追従性は高いのではないかと感じさせる一面を見せてくれたことは確かなことだ。
コーナリングフィールについて少し触れておくが、例によって、タイトコーナーなどはなく、交差点を曲がる際のフィールでは、今回突っ込み速度を上げるチャンスに恵まれなかったことも手伝って、この程度ではGTIには何も起こらない。箱根のワインディングロードにGTIを連れ出し、その懐の深さを確かめてみたい誘惑に駆られたことを白状しておこう。一点、中速コーナーをアクセル7割程度で通過する際のフィールについて報告しておくが、正確に決まるライントレース性とステアリングを通して伝達される路面との適度な対話感は、アクセルを緩めることを忘れるほどに心地よいものであった。

ミッションの選択について
DSGか?はたまた6MTか?アルファに搭載されているロボットMTセレスピードでは、シフトアップ時のショックを和らげる為にアクセルを少し戻してやる必要があったが、DSGでは不要だ。セレスピードの欠点をドライバーが補うところに面白さがあるというような主旨のことを以前アルファの試乗記で述べたが、確かにアクセルを戻すタイミングによって様々なシフトアップ時の節度感が生み出されるわけで、ドライバーはそれと格闘する面白さがあるのだ。
DSGは確かに良く出来ていてそれなりに機械的で面白さもあるが、優等生だ。
どうも私のようなへそ曲がりは、DSG仕様のGTIを6MTのGTIで追いまわす方が似合っている気がする。車好きの方ならば、このミッション選びもまた大いに頭を悩ませるに違いない。



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