マツダは、ATENZAに続く意欲作であるDEMIOのフルモデルチェンジ車を発表した。
DEMIOを迎え撃つこのクラスには周知の通り毎月の販売台数トップのFit(02/10は、7ヶ月ぶりにカローラ首位奪還、但し1月〜10月の累計販売では依然Fitが約2万台の差をつけている。)を筆頭に、Ist、MARCHが軒を連ねている。ここに新型DEMIOが何処まで迫れるかがマツダとしての大きな課題である。
グレードは、Casual(1300&1500ccDOHC)、Cozy(1300&1500ccDOHC)、Sport(1500ccDOHC)で、ミッションは、CasualとSportにAT&5速、CozyにはATのみが組み合わされている。
又、オプションとなるが、Cozyにはホワイトキャンバストップ車も用意されている。
ボディーカラーは、各々Casual;7色、Cozy;8色、Sport;6色でスタートしたが、02/11現在全グレードで10色選択可能となった。
まずエクステリアであるが、Fit、Ist、MARCHの3車から見るとオーソドックスな控えめなデザインに写る。弁護すれば、このことが反って3車との差別化に繋がっているという見方もできよう。だが『街の試乗屋さん』としては何か物足りない気がする。ATENZAのインプレッションでお話しした1989〜1992年に採用された冒険心に富んだマツダのデザインを思い出して欲しい。確かにその当時は、スポーツカーとしてRX‐7,ユーノス・ロードスターのみ認知されたもののセダン,クーペ系では日本国内において時期尚早と言わざるを得ない結果を招いた。しかし時は21世紀、もう一度当時の冒険心に富んだデザイン魂を呼び覚まし、臆せず採用して欲しかったというのが正直な気持ちだ。今後のマツダデザインに期待したい。
インテリアについては、Fit、Ist、MARCHの3車が個性を主張する中にあってオーソドックスなレイアウトではあるが、一つ一つのパーツへのこだわり(カラーを含め)が感じられる。又、室内にいるだけで清清しい気分にさせてくれる点ではMARCHに近い感性を持ち合わせている。試乗車はCozyというグレードであったが、Cozyが意味する「心地よさ」を感じることが出来る様にとインテリアカラーは3種類(カラー変更部位は、シート中央部,ドアトリム,カップホルダ)が用意され、ボディーカラーとインテリアカラーとのマッチングを楽しめる設定となっている。その他にSuper
Cozyというちょっと差別化を図ったインテリア〔シート;本革(センター材は、ファブリック),ドアトリム;ベージュ/ホワイトウッド調,カップホルダー;ミモザイエロー〕の設定もある。
安全への配慮としては、オプションでは有るがカーテン&フロントサイドエアバッグ及びDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロールシステム)が用意されている。ライバル3車と比較するとFit&Istは、フロントサイドエアバッグがオプションで用意されているが、カーテンは設定無し、又DSCの設定も無い。MARCHは、14eというグレードにカーテン&フロントサイドエアバッグが標準装備されているが、DSCの設定は無い。各社これらの安全装備についてはコスト面で悩ましいことと思うが、せめてカーテン&フロントサイドエアバッグについてはメーカーの安全への取り組み姿勢が問われる訳だから是非標準装備となるようにご努力いただきたいと思う。その他オプション装備として、インターネットサービスが受けられるマツダテレマティックス対応ナビゲーションシステム(DVDタイプ、TVチューナー付)がバックモニターとガーニッシュツイータースピーカー×2とセットで用意されている。
ここでライバル3車には無いDEMIO固有の装備を紹介しておこう。
@リヤシートスライド機構(160mm)A角度調整式アームレスト(Cozy&Sport)Bリヤシートショルダークッション(2ヶ組み合わせることにより枕等に使える)
インテリアを総括すれば個性を放つライバル3車に対してDEMIOとしての独自色が感じられる仕上がりとなっている点を評価したい。
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ROAD IMPRESSION
試乗車は、Cozyというグレードでエンジンは1500ccDOHCである。
着座しての第一印象であるが、目に入ってくるインテリアの造形とカラーがことの他、心を和ませてくれるのだ。先代の車の野暮ったさは、微塵もない。
ゆっくりとアクセルを開けていくとドライバーが加速させることをことさらに意識することなく極自然にリニアに加速していく。これは低回転から十分なトルクを発生しているエンジンとスムーズな加速を引き出すATの出来の良さとのコラボレーションがなせる業であろう。ライバル3車の中ではデミオの加速感が最も上質であると感じた。こういった車の性格付けは、ドライバーに心のゆとりをもった走りを極自然に導き出すことになる。
さて乗り心地であるが、路面からの嫌な突き上げ感もなくうまくいなしてくれる様は、なかなか気もちがいい。文字通りCozy(心地よさ)を十分に堪能できる仕上がりだ。
又、路面からの信号としてのステアリングインフォメーションを手の平に感じることができ、運転する楽しさもパッケージングされているのがうれしい。
デミオは、走り出してすぐにこれはいいと感じさせてくれる車で私が試乗した中でもごく稀にしかお目にかからない存在という訳だが、概してこういった車達に共通して言えることは、人の感性に訴える車作りをしているということなのである。デミオはそんな優れた車の一台なのである。このことからマツダの極めて真面目な開発姿勢を窺い知ることが出来る。
さてこのクラスのコンパクトカーで重要な要素である燃費と車両本体価格をFit,Ist,MARCH各車と比較しでみよう。
燃費(カタログ値)は、DEMIO(1.5Cozy),Fit(1.5T),Ist(1.5S),MARCH(14e)夫々16.0Km/L,20.0Km/L,16.4Km/L,18.4Km/Lである。又、車両本体価格を排気量で割ったリッター当たり価格(小数点以下切捨て)は、DEMIO(CD付2スピーカー,オートエアコンフィルター付,運転席&助手席エアバック付)91万円(02/8メーカー公表価格より算出),Fit(CD付4スピーカー,マニュアルエアコンフィルター無し,運転席&助手席エアバック付)90万円(02/9メーカー公表価格より算出),Ist(CD&MD付4スピーカー,マニュアルエアコンフィルター付,運転席&助手席エアバック付)94万円(02/5メーカー公表価格より算出),MARCH(CD付4スピーカー,オートエアコンフィルター無し,運転席&助手席エアバック及びカーテン&フロントサイドエアバッグ付)95万円(02/2メーカ公表価格より算出)である。補足すると4車中Fitのみアルミホイール(14インチ)が標準装備。DEMIOと比較するとエアコンがオートとマニュアルの差はあるが、Fitやや優位か。
最後にマツダが感性を重視した車作りを始めたことを大いに歓迎したい。とくにコンパクトカーであっても手を抜かない開発姿勢には注目したい。(MARCH&Fitも同様。Istはやや付け焼刃的な面が否めない。)このことは、単なる商業主義だけの車作りでは限界があり、コストとのバランスを念頭におきながら人間の感性への問いかけを忘れない人間回帰の車作りの重要性をメーカーとして強く意識した結果と見ることが出来る。
今後登場がうわさされているマツダの新型車の感性度?に注目したい。
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