私は、街の試乗屋さん

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Dec.2003
ODYSSEY IMPRESSION
(ホンダ オデッセイ試乗インプレッション)


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1994年、初代オデッセイは製造ライン(特に塗装ライン)の制約されたディメンションの中で
、ホンダの設計者の熱き情熱によって誕生した。苦境を開発のエネルギーに変換した良い例である。制約された条件の中でまさに運命的に誕生した背の低いミニバンではあったが、低床フロア化を実現し、ウォークスルーを可能としたのである。オデッセイは、『波瀾万丈の放浪の旅(冒険旅行)』を意味する。その名の通り、開発初期段階からまさに、”オデッセイ”そのものであったといえる。
初代オデッセイは、ウォークスルーを可能とした背の低いミニバンとして認知され、不動の地位を獲得するに至った。
そして1999年の2代目(2001.11アブソルート新設)を経て、更なる冒険旅行(車高は削るが、室内空間は現行同等以上を確保するという命題)を自らに課し、それを克服した3代目新型オデッセイを生み出した。2003年10月24日、第37回TOKYO MOTOR SHOWに照準を合わせての市場投入であった。
初代オデッセイは、課せられた運命の中から最良の答えを導き出した結果生まれたが、三代目オデッセイは、自ら運命に挑戦し、生み出されたという点で車名:オデッセイの意味するところをより深くしたモデルといえるのではないか。
ここで2代目とのディメンション比較をして見よう。
項目 A B 差(A-B)
新型3代目オデッセイ
(2003年)FF タイプM
2代目オデッセイ
(1999年)FF タイプM
全長(mm) 4765 4775 -10
全幅(mm) 1800 1800 ±0
全高(mm) 1550 1630 -80
ホイールベース(mm) 2830 2830 ±0
トレッド前/後(mm) 1560/1560 1565/1560 -5/±0
  室内 長さ(mm) 2790 2740 +50
幅(mm) 1535 1530 +5
高さ(mm) 1220 1215 +5
全高-80mmに対して、室内高+5mmUP
全長-10mmに対して、室内長+50mmUP
全幅±0mmに対して、室内幅+5mmUP
ディメンションの努力シロを整理すると
高さ方向で85mm長さ方向で60mm幅方向で5mmとなる。
注目がどちらかというと高さ方向に向けられがちだが、長さ方向についてもエンジンルームのレイアウト見直しにより
室内長+50mmを稼ぎ出している。
さて低床、低重心を可能としたアイテムは、『扁平樹脂製フューエルタンク』『低床対応ダブルウィッシュボーン・リアサスペンション』『薄型コンパクトチャンバー+扁平ツインサイレンサー』とのことだが、恐らく初めに目標とするボディーのディメンションが決定され、その目標をクリアーするアイデアとしてこれらのアイテムが生み出されたのだろう。そうでなければ目標は総じて甘くなり、妥協の産物となってしまう恐れがあるからだ。
カタログには何事も無かったかのように淡々と載せられているこうしたアイテムの裏にはホンダの技術屋さんを初め、多くの部品メーカーの技術屋さんの血と汗と涙?!が隠されていることは、想像に難くない。まさに微力ではあるが、このホームページから熱い賛辞を贈りたい。
こうして誕生した新型オデッセイのエクステリアであるが、傾斜角度の大きいAピラーと低い車高によって創造された伸びやかなサイドビュー、そして、薄めのヘッドライトにより鋭さが演出されたフロントマスク、これらのフォルムからは、ミニバンだからと言う理由で今までどちらかというとアクティブに走ることをイメージしてこなかった既存のミニバン達とは一線を画し、独自の道を選択した力強いメッセージを読み取ることが出来る。だが一点気になるのが、リアビューだ。フロントの挑発的なフォルムに比べるとオーソドックスだ。ここは、もう一歩踏み込んだ大胆さがあったほうが、エクステリアは更に挑戦的で引き締まったものになったであろう。
インテリアもまたエクステリアと同様に2代目とは全く方向を異にし、先進的でありかつ機能美をともなった造形に生まれ変わった。乗り込んだ車はタイプMで、メーカーオプションの『リアカメラ付音声認識Hondaナビゲーションシステム+プログレッシブコマンダー』が装着されていたこともプラスして、この車でこのまま遠出をしてみたいという誘惑に駆られた。確かにこのインテリアからは、長時間のドライブをもてなしてくれる寛ぎの空間と居心地の良さを感じとることが出来る。この様に感じさせるのは、左右に大らかに鳥の翼の様にラウンドしたインストルメントパネル、ストレス無く視界が確保されるフロントウインドーであり、視認性の良いブルーのイルミネーションに彩られた自発光立体メーター(Absoluteは、レッド照明)、シフトレバー&各種スイッチ類の造形と配置、各々の段差、クリアランス、夫々の質感にも気配りが感じられる仕上がり、これらが醸し出す機能美と高品質な雰囲気等に因るところが大きいと思う。こうしたオーナーへの惜しみない心配りは、恐らく長く付き合っていても飽きがこないだろう。全く持って余計なことかもしれないが、気になるのは、メーカーオプションである『リアカメラ付音声認識Hondaナビゲーションシステム+プログレッシブコマンダー』を装着しなかった場合のイメージが『オデッセイ=冒険旅行』とかけ離れてしまうことだ。それならば迷わずに装着すればいいわけだがオプションプライス:タイプMで\345,000、タイプLで\300,000、アブソルートで\340,000は、決して安くはない。だがこれをただ単に標準装備にすれば、プライス高のイメージがメーカーとしての懸念材料に成りかねない。しかしながら、大いなるオデッセイの旅にはナビゲーションシステムはかかせないとすれば、"よりらしくあれ!!"ということがメーカーの使命とするならば、オプションプライス又は、標準装備の何れかでのプライスダウンは、今後の課題と言えよう。




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ROAD IMPRESSION
さて初めに試乗した車は、タイプMにModulo装着車ということもあり、エクステリアからは走りのテイストが溢れていた。ゆっくりとアクセルを開けていくとトルクの立ち上がりがリニアでなめらかに加速していく。うっかり4気筒であることを忘れるほどだ。これはトルコン+CVTが功を奏した結果と言えよう。さらに深く一気にアクセルを開けてみたが、加速度のタンジェントは、あくまでリニアな感じを保ったまま気持ちよくスピードを上げることが出来た。約100Km/h迄上げてみたが、その間のエンジン音は、ある種モーター的で低く抑えられたシューンという嫌味のない心地よい音としてドライバーに伝達されるので、更にアクセルを開けることを全く躊躇させることがなかった。スムーズでリニアな加速感、そして心地よく低く抑えられた形でドライバーに伝達されるエンジン音、数値的には160PS(5500rpm),22.2Kg.m(4500rpm)と驚くほどではないが、上述した感性に訴えかける仕掛けにより十二分に刺激的なドライビングを楽しむことが出来た。
乗り心地は、比較的路面の凹凸が小さいところにおいては、フラット感が高く好印象であったが、やや凹凸の大きいところにおいては、突き上げ感が強く、しなやかさが感じられなかった。しなやかさは高級感を醸し出す上で重要なポイントとなるだけに残念だ。コーナリング時のロールは、確かに抑えられている。コーナリング時に不安感を抱くことがないのだ。今までコーナーを攻めてみたいと思わせるミニバンなどなかった。一般的なミニバンの場合は、ステアリングを切りコーナーに入ったところで片側の前輪が大きく沈み、車体が前のめりとなり、大きくロールしながらコーナリングすることは、もはや宿命として受け止めざるを得なかった。新型オデッセイは、ここに挑戦した。つまり『走り』という言わばミニバンとして諦めていた新たな付加価値を生み出したといってよい。
ステアリングの操舵力は適度な重さで自然だ。ストリーム等で見られる中立付近において半ば強制的に直進状態を保とうとする不自然なステアリングフィールではなく、違和感のない自然なフィーリングで高級感のある味付けとしている。ここは、メーカーも努力をしたところと思う。VGR(可変ステアリングギアレシオ:ステアリングのセンター付近を通常のギヤ比、大舵角時をクイックなギヤ比)については、走り出してすぐに分かると言う様な出しゃばったセッティングではなく実に控えめ。VGRについては、一般道、高速道、ワインディングと走りを重ねたところで論ずるべきか。
ブレーキフィーリングは、試乗したタイプMに限っていえば、もう一歩の感がある。細かいフィーリングの世界をいえば、パッドがディスクを締め上げる際に各々が全面接触していないと感じさせる「がさついた」印象なのだ。その為、高速域からのブレ-キングに対するコントロール性は大丈夫か?と気になった。個人的に好ましいブレーキフィーリングとはことさら止まることを意識することなく止まれる、すなわち僅かな踏力とブレーキペダルの短いストロークを与えるだけでどの速度域からでもじわりと効く、要するに「滑らかに安定して締め上げている」フィーリングがベストだ。走りを意識した新型オデッセイだけにクオリティーの高いブレーキフィーリングを与えたいと私は思う。
次にアブソルートにも試乗したのだが上述したタイプMで気になるところが、いい方向に改善されていると感じた。
まず凹凸の比較的大きい箇所についてタイプMでは、しなやかさが欠けていたと言ったが、アブソルートではなかなかうまくいなしており、しっとり感を伴う味付けとなっていた。そしてブレーキフィーリングだが、タイプMで感じた「がさついた」印象はなく「滑らかに締め上げている」と感じさせるものでベストと迄は言わないが好印象をもった。これはディスク径がタイプMでは15インチ、アブソルート16インチの恩恵もあろうが、アブソルートには「ブレーキ操作の個人差を判断して最適なアシストを実行する学習機能を持つ電子制御ブレーキアシスト」が標準装備されており、ブレーキフィーリングの味付けに少なからず貢献しているのではないかと推測する。走りのミニバンを豪語するのであれば、少なくともアブソルートのブレーキフィーリング程度は最低限、身に付けるべきと思う。
アブソルートのステアリングフィールは、タイプMと同様にあくまで路面に対して穏やかなレスポンスを示す点は、落ち着いてドライブする上で安心感を与えるが、敢えて不満を言えば、路面との対話が今一つ足りないと感じてしまうことだ。
さてアブソルートのミッションは、タイプMがCVTに対して5ATである。5ATは変速時のショックが軽減されておりATとしての完成度は高いことは認めるが、是非技術的課題を克服してCVT+7スピードを将来的にはアブソルートに搭載して欲しいと思うが如何だろうか?個人的にはアクセルを開けたくなるミッションは、CVT+7スピードだ。
ここで走りを強く意識した新型オデッセイに更に磨きをかける為のアイテムとして『街の試乗屋さん』の個人的見解を述べれば@路面との対話を高める。(感性への質感強化)Aブレーキフィーリングの更なる強化(より感性への質感を高め、さらなる安心感の高いものへ)BアブソルートのミッションにCVT+7スピードを採用(滑らかに高速域へと誘う、さらなる魅力的なスポーツミニバンへ)等が考えられる。
このように新型オデッセイに更なる飛躍を求めたくなるのは、新型オデッセイが新たに身に付けた「走るミニバン」に対するメーカーの拘りを純粋に感じたからだ。
ホンダさんにはこれからも独自性に拘ったもの作りに挑戦し続けて欲しいと心から願って止まない。




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