私は、街の試乗屋さん

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Oct.2004

PEUGEOT 206RC IMPRESSION
(プジョー206RC試乗インプレッション)


ROAD IMPRESSION先頭へ
プジョー206RCの試乗記を纏めるに当たり、私の前に姿を現したプジョーたちを簡単にふり返って見ることにした。(順不同で登場!)
プジョーとの初めての出会いは、片側2車線の自動車専用道路だった。プジョーの名は、205だ。今から14年ほど前のことだが、今でもはっきりとその勇士が思い浮かぶ。彼は実に軽い身のこなしで2車線を巧みに使い、群れから抜け出していった。至ってシンプルな外観からは想像ができない欧州車のその速い身のこなしに驚愕したのを思い出す。そして、次の出会いは、106ラリーだ。たまたま訪れたディーラーで体験試乗する機会を得た。試乗車は、左ハンドル1300CCエンジンで100馬力、5MTだ。この数値的にはどうということのない車だが、走り出した瞬間からもう楽しくてしょうがない。アクセルを踏みつけると瞬時に心地よい咆哮を轟かせて反応するエンジン!このエンジン音に魅せられながらワインディングロードを駆ければ、困ったことに興奮は高まるばかりで収束をむかえることはなかった。次は、406だ。406 V6の路面を舐めるような乗り心地のよさと滑らかな加速感に感動した。この406 V6は、トルクフルで市街地走行において軽快なフットワークを見せてくれた。406といえば、406Sportにもふれておきたい。2230ccで最高出力156PS、最大トルク22.1Kg.m、左ハンドル、5MT仕様車だ。この406Sportは路面をなめらかにしっとりと通過していく、まさにプジョーの猫足を代表するモデルだ。又、アクセルワークに忠実に、限りなく滑らかに吹き上がるエンジンの上質な回転フィールは最高に気持ちがいい。クラッチペダルの踏力は軽く、シフトストロークは長めで節度感も不足しているのだが、走りだすとそんな些細なことは忘却のかなたに追いやられシフトワークに呼応した走りに酔いしれてしまう。この走りは、速さを競う刺激的なものとはまったく次元の違うピュアなさわやかさをもたらすものだ。この独特な感性を刺激する走りこそプジョー406Sportの真髄だ。次は、306S16だ。市街地をINTE Rで走行中に彼は現れた。ここだけの話だが彼の速度は市街地での法定速度をはるかに上回っていた。私の速度?もちろん法定速度+αだ。最終的な決着は、もちろんINTE Rだが306S16の高い運動性能には正直驚かされた。(306S16のミッションは、6MTだ。)次に本試乗記にも登場するプジョー307XTである。306のオーソドックスなスタイリングからの飛躍的変貌であった。この車の足は406のしなやかな猫足とは異なりやや硬質感をともなったものに感じられた。そして、ルーフが電動開閉式によりクーペにもカブリオレにも変身可能なファッショナブルな307CCに出会った。この307CCの走りもまた大いに魅力的であった。(詳細は“PEUGEOT307CC IMPRESSION”をご覧下さい。)以上、ご紹介したようにプジョーでしか味わえないプジョー独特のドライビングプレジャーの世界が確かに存在するのである。
さて、かなり前置きが長くなってしまったが、時は1999年、206が登場した。ふと14年前に出会ったあの205が脳裏をかすめた。206が205の後継モデルとすれば、やはりホットハッチの頂点に立って欲しいという期待感を個人的には持ちつづけていた。その期待に応える最高峰モデル、それが今回試乗した206RCである。




エクステリア&インテリア
206RCのエクステリアは、実にさりげなく差別化が図られている。
ボディー同色のバンパー&サイドプロテクションモール、ハニカム形状のフロント開口部、RC専用リアスポイラー、RC専用デュアルエキゾーストパイプ(クローム仕上げ)、RC専用リアエンブレム、カーボンタイプのドアミラー、タイヤは、205/40ZR17である。
インテリアで目を引くのは、アルカンタラ、レザー、メッシュで構成されたRC専用バケットシートである。しかもリアにもバケットシートが奢られていて高速移動体としての真摯な心配りに素直に感動した。レザーにステッチが施されたメーターバイザーとカーボンタイプフェイシア、RC専用アルミ製ペダル、アルミ製シフトノブ、RC専用にシルバーに縁取られたメーター類、タコメータはRC専用でレッドゾーン表示は、約7200rpm以上(RC以外では、約6300rpm以上)。これらのアイテムの一つ一つが静かにスポーツマインドを刺激する。個人的にはこの206RCの控えめな主張が好きだ。なかなか粋な車だと思う。
206RCのミッションは、ATの設定はなく5MTのみだ。しかも左ハンドルであり、日本国内ではかなり乗り手を選ぶ車といえる。それだけに206RCをきっちりと乗りこなすことは、とてもお洒落だと思う。
ボディーカラーは、エーゲ・ブルー、アルミナム・グレー、オブシディアン・ブラック、ビアンカ・ホワイト、アデン・レッドの5種類から選択することになる。もう少し選択の幅が欲しい。

車両本体価格(消費税抜き)
オートエアコン(花粉フィルター付)、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)、運転席・助手席のフロント&サイドにエアバック、FM/AM MDプレーヤーなどが標準装備で294万円である。

ライバル車比較
ここで206RCの気になるライバル2車(Renault Sport2.0、HONDA INTEGRA TYPE R)と外観寸法、動力性能面&価格面を比較してみよう。
車種 外観寸法 動力性能面 価格面
全長
(mm)
全幅
(mm)
全高
(mm)
A
馬力当たり重量
(Kg/PS)
B
トルク当たり重量
(Kg/Kg.m)
C
A×B
(Kg2/PS・Kg.m)
リッター当たり価格
(¥/L)
馬力当たり価格
(¥/PS)
PEUGEOT
206RC
3835 1675 1440 6.27 53.88 338 1,472,208
16,610
Renault
Sport 2.0
3770 1670 1410 6.16 51.96 320 1,296,296 15,058
HONDA
INTEGRA
TYPE R
4385 1725 1385 5.36 56.19 301 1,301,301 11,818
Note) 1.上記数値は、PEUGEOT 206RC(04/1時点)、Renault Sport 2.0(00/12時点)、 HONDA INTEGRA TYPE R(04/9時点)の各カタログ値を用いた計算値。(外観寸法は、カタログ記載値の通り。)
2.価格面の各数値の算出に当たっては消費税を含まない車両本体価格を用いた。
3.装備面について補足するとPEUGEOT206RCのみESP付。(ESP:エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)HONDA INTEGRA TYPE Rのオーディオはオプションのため算出価格には含まれていない。

上表の動力性能面での一つのみかけの指標であるC値は3車共に比較的近接しており、もちろんドライバーの技量によるがRenault Sport 2.0&HONDA INTEGRA TYPE Rは、PEUGEOT206RCのよきライバルとなることは間違いない。出来るならば、この3車をワインディングロードに同時に連れ出し、PEUGEOT206RCの力量を見極めたいところだ。リッター当たり価格で見るとPEUGEOT 206RCがやや高価な印象を与えているが、206RCにはESPが標準装備(他2車設定なし)されていることを考慮すると実質的な価格面での差は極端に大きくはない。

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ROAD IMPRESSION
シートに着座して驚いた。まるで板の上に座らされているほど硬いという印象を受けるのだが、シート下部からの反力が巧みに分散されている感じで、実に快適なのだ。座った瞬間から206RCとの濃密な一体感を伝えながらも快適性をも併せ持っているのだ。ここまで硬く、かつ快適性をも感じさせてくれるシートは、なかなかお目にかかれない。VOLVO S40なども硬質感(かなり硬い部類に入る。)と快適性を併せ持っている点で類似性はあるが206RCは、さらに硬いのである。
クラッチは、実に軽い。シフトストロークは長めに感じたが、操作は軽くスコスコと軽快なチェンジが可能だ。クラッチが軽い為、繋がる位置がやや掴みにくく、若干慣れが必要だ。長距離走行での疲労感を考えるとクラッチは軽い方がいいという見方もあるが、個人的には重めの方がコントロール性がよく、疲労感よりも優先したい。
ステアリングフィールは、直進時において速度が増すほどに手ごたえがはっきりと手の平に伝わってくる味付けで、安心感も比例して増加してくる。コーナリング中にも心地よい反力がステアリングを通して伝達されるので、非常に安心感が高い。
サスペンションは、硬質感がありプジョーのしなやかな猫足とは一線を画す。だが単に硬質であるという表現は当たらない。確かに筋肉隆々という感じが路面から伝達されるが、ハーシュネスは決してきつくはなく、しっかり感がありながら乗り心地は良いのである。路面との感触を表現すれば、あたかもタイヤに吸盤がくっ付いているかのようで路面からタイヤが離れることがないと感じさせるのだ。これは、やはりプジョーの足だ。鍛え抜かれた野生の猫足といっていい。
アクセル開度に対するエンジンの吹け上がりは、すこぶるよく回転上昇に伴いごく自然に闘争本能に火がつけられてしまう。
前述した鍛え抜かれた猫足とアクセル開度に呼応するすこぶる元気なエンジンを伴ってのコーナリングは刺激的であり、かつ非常に安定感を伴ったものだ。試乗コースには車に減速を促す為に故意に車がバウンシングするように道路に細工が施されている中速コーナーがあるのだが、通常のFF車であればアクセルを開けていくと足が追随できずに簡単にアンダーステアを露呈するのだが、この206RCは、路面に張り付いたままのオンザレール感覚でのコーナリングが可能であった。アクセル開度は試乗車でありやや遠慮して8割程度であったが、まったく不安感をいだくことがなく十分余力があると感じた。こういう車は、癖になる。少々のことでは破綻しないとなるともっと攻めてみたくなるからだ。とにかくおとなしく走らせたくない車、それがPEUGEOT 206RCなのだ。
P.S)206RCは、左ハンドル、5MT車だ。いつものレイアウトとは異なる車を動かすことへの適度な緊張感が面白い。さらに206RCのハイパワーを的確なシフト操作で引き出していくにはそれなりに慣れも必要だ。こういった車を所有することの悦びの一つは、206RCのベストドライバーは所有者自身であると自負することではないだろうか?そして、そうなるまでのプロセスもまた楽しい。


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