マーチは1982年に誕生し、1992年にフルモデルチェンジ、そして2002年春、二度目のフルモデルチェ
ンジを迎えた。この20年間マーチという車名は、色あせることなくユーザーに愛され親しまれてきた。他の車たちの名前が次々に消されていく中でよく健闘している車であると言える。日産のなかではスカイラインに次ぐネームバリューの高い車、それがマーチだ。・・・・『エッ?セドリック,フェアレディーZは?』と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、国内だけではなく欧州でも堅実に販売台数を伸ばし活躍した車となれば、やはりマーチでしょう。
日産は、ゴーン改革路線に乗っかり、シーマ、プリメーラ、V35スカイライン、ステージアを送り出し、新生日産の姿を市場にアピールしてきたと思うが、残念なことに爆発的ヒット車がまだ無い。そういった意味からフルモデルチェンジされたマーチには、自ずと期待が寄せられる。
グレードは、1000ccの10b(3ドアー&5ドアー),1200ccの12c(3ドアー&5ドアー)、1400ccの14e(5ドアーのみ)で試乗したのは12c(5ドアー)である。
さて、エクステリアは10年前のマーチと比べて可愛らしさと親しみやすさをそのままに洗練されたデザインに生まれ変わった。ヘッドライト廻りの造形からは、ユーザーへの優しい目線を感じる事が出来、グッドデザインだ。新聞の折込広告で見ると小振りに見えたが、現車はボリューム感があり、特にリヤビューはトレッド拡大が功を奏して安定感のあるデザインに仕上がっていた。ボディーカラーは、Fitより2色多い12色でオーナーになる人にとっては、うれしい迷いを誘うカラーバリエーションが揃っている。
1992年モデルとディメンション比較してみると全長×全幅×全高で夫々-25mm,+75mm,+100mm、ホイールベース,トレッド前・後では夫々+70mm,+105mm,+130mmである。全長短縮以外は、すべて拡大された。これらの意味合いを以下の要素で検証してみた。
@ホイールベース/全長(オーバーハングの割合),Aトレッド(前)/ホイールベース(コーナリング時の安定度T),B車軸〜ルーフ迄/トレッド(前)(コーナリング時の安定度U)
これら@〜Bの数値を新・旧で比較すると@0.66,0.63A0.60,0.58B0.84,0.84である。
(@〜Bの値は、カタログに記載された数値を用いた計算値である。)
これらの値から言える事は、オーバーハング切り詰めによる前後バランス向上、Bが同値でAの数値が新型の方が高いことからコーナリング時の安定度は旧型に比べて向上していると言える。車高が100mmUPしているが、うまくバランスを取った結果がこれらの値に現れているといえる。
参考にVITZ (RS1.3L)、Fit,CRUZEの@〜Bの値をご紹介しておこう。
VITZ、Fit、CRUZEの順に@0.65,064,0.65A0.61,0.59,0.60B0.84,0.85,0.89である。
新型マーチの値がVITZと肉薄していることは、興味深い。
さて、インテリアであるが、ドアーを開けて目に飛び込んできた造形は、なかなか新鮮で他車とは違う味、すなわち優しさ、親しみやすさ、居心地のよさを感じさせてくれるデザインだ。日産がいかに前向きに真面目にデザインを煮詰めたかが窺い知れる仕上がりだ。カップホルダーは、フロントとリヤに各二個設けられているが、これらは格納式になっていて機能的だ。この辺のデザインにも明らかにこだわりを感じる。
収納スペースについてVITZ、Fitと比較して見た中でMARCH固有のものとしては、グローブボックス内A4サイズトレイ(14e標準、10b,12cオプション),オーバーヘッドコンソール(標準装備)である。収納スペースは各車夫々に工夫を凝らしており、差別化を図るためにはアイデアが勝負どころだ。
メーカーオプションとしてキーを持たずにドアーの開閉及びエンジン始動が可能となるインテリジェントキーそして、“交通情報,ニュース,天気予報,ハンドフリー電話,ここです車メール(車の居場所を携帯又は、パソコンに送信可能、受信はメール又はハンドフリー電話で可)等”の欲しい情報にアクセスできる『日産情報サービス
カーウィングス』、いずれも高級車並の装備が用意されている。但し、インテリジェントキーは12c(E-ATx)のみ(14e:標準装備)、カーウィングスユニットは、12c(5F&E-ATx)&14eに装着可能となっている。
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ROAD IMPRESSION
試乗した12c(E-ATx)にはオプションであるインテリジェントキーが装着されていた。キーの代わりにこのインテリジェントキーをもっていれば、鍵穴にキーを差し込まずにドアノブ近傍にあるスイッチをプッシュするだけでドアを開けることが出来る。エンジン始動は、通常ならばキーシリンダーにキーを差込んだ後にキーを捻る訳だがインテリジェントキーでは、キーシリンダーにキーを差し込まずにキーシリンダーを捻りエンジンを始動させることが出来る。インテリジェントキーであればポケットからのキーの出し入れは不要となり、身に付けているだけでOKだ。ちょっと優越感にも浸れるうれしいIT装備といえる。
着座してまず感じたことは、優しさ溢れる空間に身を委ねる心地よさであった。この感覚は、VITZ、Fit、CRUZEなどでは味わえない新型マーチ独自のものと断言していい。
ゆっくりとアクセルを開けていったが、立ち上がりは非常にスムーズで下から充分トルクが出ていると感じさせるもので混雑したストップ&ゴーを強いられる街乗りにおいても、ゆとりを持ったドライビングが可能である。12cよりも動力性能が勝っている14eではなお更街中におけるゆとりをもったドライビングに磨きがかかると想像する。
又、前述した優しさ溢れる空間に身を委ねていることで、極自然にゆとりを持ったドライビングへと導かれる気がしたのは私だけであろうか?この様な感覚は、ジャガーXJ(4.0L)にもあったがなどと言うとジャガーオーナーの方から庶民のマーチとジャガーを一緒にしないでくれと言われそうなのだが、『ゆとりをもって運転してください。』というメッセージが車から発信されるのは、私の知る限りジャガーXJ(4.0L)だけだったので、あえてお話しさせていただいた。
新型マーチは、高級車ジャガーにも通じる感性を身に付けているというのは誉め過ぎだろうか?
次に乗り心地であるが、一般舗装路を走行する限りにおいて極めて満足のいくものであった。又、路面からの突き上げに対してもドライバーへの不快感はなく、旧型に比べてボディー剛性が格段に向上していると感じさせた。機会があれば連続した不整路走行における乗り心地についても確認したいところだ。
走行中の室内騒音は、エンジン音,ロードノイズ共に低く、このクラスではベストではないか?
電動パワステについて触れておくが、アシスト音及びステアリング操作上の違和感は皆無であり、電動であることを知らされなければ分からない。あくまで市街地をゆとりをもってステア操作した範囲内の話であって、角速度を早めたステアリング操作(切り返し等)におけるレスポンスは未確認である。
さてこのクラスの小型車で重要な要素である燃費と車両本体価格をVITZ,Fit,CRUZEと比較しでみた。
燃費(カタログ値)は、VITZ U(1.3L),Fit,CRUZE,MARCH(12cE-ATx)夫々18.0Km/L,23.0Km/L,17.4Km/L,19.0Km/Lで、Fitに次ぐ好燃費である。又、車両本体価格を排気量で割ったリッター当たり価格は、VITZ(U
D-Package5door4ATオーディオ付)88万円(02/1メーカー公表価格より算出),Fit(Wタイプオーディオ付)94万円(01/6メーカー公表価格より算出),CRUZE(Eタイプオーディオレス)99万円(01/6メーカー公表価格より算出),MARCH(12cE-ATxオーディオ付き5door)88万円(02/2メーカ公表価格より算出)でMARCHとVITZが同値であり、トヨタの販売戦略の徹底振りが伺えるわけだが、MARCHの価格がトヨタにインパクトを与えたことは確かだ。
新型マーチは、心にゆとりを持って心地よくドライビングを楽しめる類まれなる小型車と言える。これは、一重に小型車であっても決して手を抜くことなく感性に訴える真面目な設計姿勢を貫いたことが背景にあると思う。又、低コスト化を織り込みながらも全くチープな印象を見せないデザイン力(部品メーカーさんの努力もあると思うが・・・。)には、大いなる拍手を贈りたい。
新型マーチが日産車の販売台数を伸ばす牽引役となることは、間違いないだろう。
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