クラウンマジェスタが一新され、トヨタブランドの頂点に立つ高級車として生まれ変わった。その
証として新型マジェスタにはフロントグリル中央にあった従来のクラウンマークに替えて現行セルシオ等に与えられているトヨタブランドを誇示するマークが贈られた。セルシオがレクサスブランドへ移行するとなれば、必然的にマジェスタがトヨタブランドの頂点に立つ車となるわけである。今回の新型マジェスタにはVehicle
Dynamics Integrated Management:VDIM(EBD付ABS・VSC・TRC・電動パワーステアリング統合制御)、プリクラッシュセーフティシステム、レーダークルーズコントロール(ブレーキ制御付)、レーンキーピングアシスト(LKA)、ナイトビュー等の未来志向の電子制御デバイスが積極的に投入されている。搭載されるエンジンは、現行セルシオと同型式3UZ-FE(V型8気筒DOHC4.3L,280PS,43.8Kg.m)である。旧型は4.0リッター、3.0リッターの2本立てであったが、新型では4.3リッター1本に絞られた。グレードは、Aタイプ,Cタイプ,Cタイプi-fourの3タイプである。
ここで3タイプの相違する主たる装備と車両本体価格(消費税抜き)を比較してみよう。
相違する主たる装備と車両本体価格(消費税抜き)比較表(参考)
メーカーオプション価格(消費税抜き),○:標準装備
車種タイプ |
Aタイプ |
Cタイプ |
Cタイプ
i-Four |
車両本体価格(消費税抜き) |
¥5,400,000 |
¥5,800,000 |
¥6,070,000 |
相違する
主たる装備
(参考) |
ECB(電子制御ブレーキシステム) |
○ |
○ |
- |
VDIM(EBD付ABS・VSC・TRC・
電動パワーステアリング統合制御) |
○ |
○ |
- |
プリクラッシュセーフティシステム
レーダー方式 |
- |
メーカー
オプション
\270,000 |
メーカー
オプション
\270,000 |
レーダークルーズ
コントロール
(ブレーキ制御付) |
低速追従
モード付 |
メーカー
オプション
\100,000 |
メーカー
オプション
\100,000 |
- |
低速追従
モード無し |
- |
- |
メーカー
オプション
\70,000 |
電動リヤサンシェード&
リヤドアサンシェード(手動式) |
- |
○ |
○ |
本革(シートヒーター付) |
- |
メーカー
オプション
\150,000 |
メーカー
オプション
\150,000 |
オットマン機能付助手席シート |
- |
メーカー
オプション
\110,000 |
メーカー
オプション
\110,000 |
リヤセンターアームレスト
(ボックス・カップホルダー付) |
アクセサリー
ソケット・
コントロール
スイッチ
(オーディオ・
リヤパワー
シート・
リヤエアコン・
電動リヤ
サンシェード)付
|
- |
○ |
○ |
オーディオ
コントローラー付 |
○ |
- |
- |
リヤオートエアコン |
- |
○ |
○ |
排ガス検知式内外気自動切換えシステム |
- |
○ |
○ |
プラズマクラスター |
- |
○ |
○ |
NOTE) |
1.レーンキーピングアシスト(LKA):\200,000、リヤフォグランプ(寒冷地仕様に含む):\18,000、クリアランスソナー:\40,000、ナイトビュー:\300,000の各装備は、3タイプすべてにオプション設定。
2.上記の情報「表記内容&NOTE)1.」は04/10時点のメーカーカタログより抜粋。 |
ここでCタイプに、オプションの先進装備として選択した@プリクラッシュセーフティシステムレーダー方式Aレーダークルーズコントロール(ブレーキ制御付)低速追従モード付Bレーンキーピングアシスト(LKA)Cナイトビューを装着した場合の価格を参考に算出してみると+87万円(消費税抜き)で、車両本体価格では667万円(消費税抜き)にもなる。
もしマジェスタをドライバーズカーとして楽しむのであれば、敢えて上記オプションに拘る必要はなく、Cタイプとの車両本体価格差でマイナス40万円のAタイプを選択する方がいい。またマジェスタにはそういった走りを愛する向きに格好のドレスアップパーツ(T-tune)も揃っているのでこれらのパーツ購入費にマイナス40万円を当てるのもいいだろう。T-tuneにはTRD、TOM'S又はMODELLISTAバージョンがあり、さらなる威厳と凄み!?を手に入れてみるのも面白い。
AudiA6 4.2 quattro,BMW545iとの比較
参考までにV8エンジン搭載車であるAudiA6 4.2 quattro,BMW545iとディメンション、動力性能面、価格面及び燃費等についてマジェスタと比較してみた。(下表参照)
車種 |
外観寸法 |
動力性能面 |
価格面 |
.燃費
(km/L) |
全長
(mm) |
全幅
(mm) |
全高
(mm) |
A
重量/馬力
(Kg/PS) |
B
重量/トルク
(Kg/Kg.m) |
C
A×B
(Kg2/PS・Kg.m) |
価格/リッター
(¥/L) |
価格/馬力
(¥/PS) |
MAJESTA
C type |
4950 |
1795 |
1465 |
6.04 |
38.58 |
233 |
1,351,351 |
20,714 |
9.1 |
Audi A6
4.2 quattro |
4915 |
1855 |
1455 |
5.52 |
43.22 |
239 |
2,024,639 |
25,160 |
7.0 |
BMW545i |
4855 |
1845 |
1470 |
5.38 |
39.00 |
210 |
2,000,910 |
26,426 |
7.6 |
NOTE) |
1.表記の数値はMAJESTA(04/10時点)、Audi A6(04/8時点)、BMW545i(03/9時点)の各メーカー公表値を用いた計算値である。(外観寸法及び燃費は、カタログ記載値の通り。)
2.価格面の各数値の算出に当たっては消費税を含まない車両本体価格を用いた。(Audi
A6の場合、車両本体価格が消費税込みとなっている為、消費税5%を除いた額をベースとして算出した。) |
上表から動力性能面を上表C値(動力性能の一つの指標)で比較するとマジェスタの値はアウディA6
4.2 quattroと同等以上であることが分かる。また価格面ではリッター当たり価格&馬力当たり価格ともマジェスタが2車をおさえており、かつ低燃費でもある。
これらの数値上からみるとマジェスタは、お買い得感の強いV型8気筒エンジン搭載車といえる。
エクステリア
新型クラウンマジェスタのエクステリアは、ベースとなるゼロクラウンを巧みにモディファイし、マジェスタとしての存在感をアピールする非常に押し出し感の強いフォルムに仕上がっている。ゼロクラウンの躍動感にプラスして大いなる威厳を与えられたマジェスタは、これからの第二の人生をゆとりをもって大いに楽しみたいと計画しているいわゆる団塊の世代にも似合いそうだ。先代のマジェスタは、第二の人生を静かにゆったりと過ごすというイメージであったが、新型マジェスタでは第二の人生をアクティブに過ごして欲しいというメッセージを感じ取ることが出来る。エクステリアに関していえば、ややディメンション的には細身なマジェスタではあるが新型アウディA6、BMW5シリーズなどと比較しても決して見劣りすることはない。なぜならば、この新型マジェスタのフォルムが日本人としてのプライドを静かに主張しているからだと考える。昨今の日本車のデザインがどちらかというと欧州よりに傾く中、マジェスタのように日本人を見据えたデザインは、逆に目を引くし、大変魅力的に感じる。ちなみにボディーカラーは7色が用意されている。
インテリア
インテリアは、ベースクラウンと共通レイアウトではあるが、時計(四角→楕円)、ナビ画面周り&ATシフト周りの化粧板付加、メーター(水温計追加で4連)、ステアリング(本木目+本革巻き)、シフトノブ(本木目+本革巻き)、パネル(木目調→本木目)、ステアリングセンターマーク(クラウン→トヨタブランド)、ナビ下部のマーク(CROWN→MAJESTA)等の変更によりマジェスタとしての高級感の格上げが図られている。ここで注目したいのは、木目調を本木目パネルに替えるだけではなく、細部にも目を配り差別化を図ったことだ。こういった姿勢がオーナーの所有する悦びに繋がるのである。内装色は、標準装備シート仕様(ジャガード織物)ではマホガニーブラウンとアイボリー、オプションの本革シート仕様ではブラックとアイボリーが用意されている。
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ROAD IMPRESSION
試乗車は、Cタイプで追加オプション未装着の標準仕様車であった。
乗り込む前にドアの開閉音をチェックしてみたが、低く重厚な締まり音を聞かせてくれた。しかも前後のドアで音質が均一であると感じさせる仕上がりぶりは、高級車の資質の一つとして評価したい。次にパワーシートの作動音にもふれておくが、シートスライド、リクライニング、リフターの各作動音は騒音レベルが低く抑えられており、かつ不快な音は皆無で、高級車を強く意識した心配りが感じられた。
アクセルペダルに置いた右足に僅かな力を加えるとマジェスタは、静かに滑らかにそしてゆったりと動き出した。僅かなアクセル開度であっても回転系の滑らかさを感じ取ることが出来、実に心地良い。さらにアクセルペダルを開けていくと踏み込み量に忠実に滑らかにしかも極めてリニアに加速していく。約70Km/h程度の一定速に達したあとにやや深めにアクセルを踏み込んでみると滑らかさにトルクフルなV8の力強さが加わり、滑るように速度が増していく。アクセル開度に過敏に反応するのではなくあくまでドライバーの感性に合致したリニアな加速感が得られるのである。滑るような加速感といったが、これはセルシオで実績を積んだV8エンジンの精緻さを余すところなく滑らかに伝達する6ATの完成度の高さと夫々を巧みに連携させる制御系の成せる業といえよう。
V8エンジンの滑らかさと力強いトルク感はくせになりそうだ。感性にしっかりと訴えかけてくる上々の仕上がりと言って良い。エンジン音は、加速時に僅かに耳に届く程度でよく押さえ込まれている。そして僅かに聞こえてくるエンジンノイズもまた心地よくチューニングされているようにさえ感じた。どうもV8の印象が良過ぎるのでV6クラウンが粗野に見えてきてしまうのは困ったものだ。これはもちろんV8とV6というメカニズムの差がもたらすものと捉えることは誤りではないが、新型JAGUARに搭載されているV6エンジンは、極めて滑らかで精緻な印象であったことを考えるとクラウンのV6にはどこかトヨタ流のコストリミッターが効いているのかもしれない。(ZERO
CROWNとて決してお安くはありませんが・・・。)
さてステアフィールであるが、V6クラウンでは電動パワステが軽すぎて、路面とのコンタクト感が不足していたが、マジェスタでは路面とのコンタクト感が良好だ。これはV8エンジンの重量感が逆に功を奏した結果かもしれない。電動パワステの操舵感は、しっとりとしていて精緻な印象だ。交差点をただ単に曲がるだけでも路面とのコンタクトを取りながらアクセルを開けていくフィールがなかなか気持ち良い。(これはあくまで侵入速度を抑えてマナーよろしく高級車らしく振舞った場合である。)コーナーから直線に向かいアクセルを適度に開けていったときのステアフィールは、しっとりと落ち着いていて高級車を運転する楽しさを味わうことが出来る。ステアフィールは、総じて自然で落ち着いている印象なのだが、コーナーに向けてしっとりと鼻先を向ける動作が高級車マジェスタに良く似合っているのだ。
ブレーキフィーリングは、ことさら踏力を必要とせず、ペダルに足を乗せておけばじわじわとパッドが締め上げられていく感じだ。ブレーキング時のノーズダイブを意識することもなかった。街中において不安感はないが、強いてあげれば、精緻な剛性感が欲しいところだ。
乗り味についていうと、通常の直線路をただ単に走行するだけでもしっとりとしたいい感じがステアリングを通して伝わってくる。なかなかフラット感も高く、重厚な感覚、つまり地に足が着いた感じで好感が持てる。凹凸通過のいなし方もまた、しっとりとした感触で好印象をもった。
マジェスタは、欧州の高級車とは一線を画し、ある意味日本の高級車像を体現していると言う点でセルシオ同様、評価できる車だ。コストパフォーマンスが高い点も評価したい。(表記参照)
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