3代目レジェンド登場から8年半の時を経て2004年10月、4代目新型レジェンドが誕生した。4代目レ
ジェンドには、画期的な世界初の四輪駆動力自在システム;SH-AWD(Super Handring All-Wheel-Drive)をはじめ、インテリジェント・ナイトビジョンシステム(歩行者を音と強調枠表示でドライバーに注意喚起:世界初)、車速/車間制御機能、車線維持支援機能等の先進装備、各部材のアルミ化による徹底した軽量化などが織り込まれており、如何にもホンダらしい技術への拘りが感じられる。さて話題のSH-AWDについて誠に僭越ではあるが、個人的に頭の中を整理しておきたいとの思いから少し触れさせていただく。世界初の四輪駆動力自在システムは、他車で見られるような前後輪へ駆動力を配分するだけではなく、後輪左右への駆動力配分をも含めて四輪への最適な駆動力を自在に制御するシステムである。後輪左右の駆動力を配分するシステムでは、三菱ランエボのAYC(アクティブ・ヨー・コントロールシステム)があるが、ランエボの場合は、前後駆動力配分が50:50の固定である。SH-AWDの前後輪への駆動力配分は、前:後で70:30〜30:70、左右後輪への駆動力配分は、左:右で100:0〜0:100の範囲内で自在に制御される。又、リヤドライブユニットには後輪の回転数を前輪に対して増速する世界初の増速機構が内蔵されている。これは、コーナリング時に生じる前輪と後輪の軌跡差による回転数差を補正し、よりスムーズな旋回を可能とする為のものだ。このSH-AWDは、基本的にはフィードフォワード制御で、所期の車両挙動にならない場合は、フィードバック制御を行うシステム構成になっている。これらの制御系ロジックを確立する為の泥臭い戦いを勝手ながら想像する時、これに携わったすべての技術屋さんへ大いなる賛辞を心から贈りたいと思う。
記述がいささか遅れたが、四代目レジェンドは、日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会主催の2004-2005日本カー・オブ・ザ・イヤー及び先進技術を評価するモースト・アドバンスド・テクノロジーをダブル受賞、かつ日本自動車研究者・ジャーナリスト会議主催のRJCテクノロジー・オブ・ザ・イヤーをSH-AWDで受賞した。
ここで3代目とのディメンションを比較してみよう。(下表参照)
項目 |
A |
B |
差(A-B) |
新型4代目レジェンド
(2004年モデル)SH-AWD |
3代目レジェンド
(2003年モデル)FF |
全長(mm) |
4930
|
4995 |
-65 |
全幅(mm) |
1845 |
1820 |
+25 |
全高(mm) |
1455 |
1435 |
+20 |
ホイールベース(mm) |
2800 |
2910 |
-110 |
トレッド前/後(mm) |
1575/1585 |
1550/1540 |
+25/+45 |
室内 |
長さ(mm) |
2025 |
1995 |
+30 |
幅(mm) |
1515 |
1475 |
+40 |
高さ(mm) |
1185 |
1165 |
+20 |
・全長-65mmに対して、室内長+30mmUP。
・全幅+25に対して、室内幅+40mmUP。
・全高+20mmに対して、室内高+20mmUP。
ディメンションの努力シロを整理すると長さ方向で+95mm、幅方向で+15mm、高さ方向では±0mmとなる。
長さ方向では、エンジン縦置きから横置き及びバンク角90°→60°に狭めたことが効いている。
ホイールベース-110mmに関しては、前述した前後輪の旋回時の軌跡差による増速割合と関連して試行錯誤の上で決定されたのではないか?と推測をしている。(全く外れていた場合は、ご容赦願いたい。)
エクステリア
エクステリアは、残念だが私の感性とややアンマッチだ。SH-AWDの先進技術をもっと誇示する迫力あるエクステリアであって欲しかった。あるアングル(この試乗記で載せているアングル)から見ると迫力を感じる一面を有しているのだが、サイドビュー、リアビューは総じておとなしく映る。塊り感を表現したというが、大地に根を下ろした低く構えたどっしり感を併せ持ったフォルムとしては、物足らない。人を振り向かせ、その人の目をくぎづけにする演出に一切の遠慮はいらなかった。なぜならば、世界に誇れるSH-AWDを搭載した唯一の車だからだ。
しかしながら外観塗装では「超高外観塗装」とホンダがいうクオリティーへの拘りを魅せてくれたことは、高級車を所有する悦びを倍加する演出として高く評価したい。ボディーカラーの設定は、6種類である。
インテリア
インテリアのイメージは、先進的でありかつ高級車としての落ち着き感を併せ持った高品位な印象だ。センターのメタル調ガーニッシュとブルーを基調とした立体自発光メーターの演出がいい。3次元曲面のインストルメントパネルの造形は美しく、高品位な落ち着き感を醸し出している。センターのスピードメーター内にはSH-AWDのトルク配分が控えめに表示されるのだが、ことさら誇示することはなくさり気ないところが個人的には好きだ。一点残念なのが目を引くインストルメントパネルが標準では木目調であることだ。インストルメントパネルにはオプションで天童木工製の本木目パネルを奢ることが可能だが、単品での設定はなくエクスクルーシブパッケージという他のオプション装備(パワートランクリッド、電動リアサンシェイド、リアドアウインドウ・サンシェイド)が含まれたセットオプション(消費税抜き\200,000)を選択することになる。世界に唯一のSH-AWDを搭載したレジェンドには天童木工製本木目のインストルメントパネルが相応しいとするならば、そもそもオプション設定にはすべきではない。木目調など論外であるという強い意志が欲しかった。また試乗車はオプションのレザーインテリア仕様(消費税抜き;\180,000)であったが、質感を高める意味では、必須という思いを強くした。
シートカラーは、標準でブラックとライトウォームグレーの2色、オプションのレザーインテリアでは、ブラック、ライトウォームグレー、プレミアムアイボリーの3色が用意されている。
AudiA6 3.2 quattro,BMW530iとの比較
参考までに6気筒エンジン搭載車であるAudiA6 3.2FSI quattro,BMW530i各々のディメンション、動力性能面、価格面及び燃費等についてレジェンドと比較してみた。(下表参照)
車種 |
外観寸法 |
動力性能面 |
価格面 |
.燃費
(km/L) |
全長
(mm) |
全幅
(mm) |
全高
(mm) |
A
重量/馬力
(Kg/PS) |
B
重量/トルク
(Kg/Kg.m) |
C
A×B
(Kg2/PS・Kg.m) |
価格/リッター
(¥/L) |
価格/馬力
(¥/PS) |
LEGEND |
4930 |
1845 |
1455 |
6.00 |
50.00 |
300 |
1,549,986 |
17,933 |
8.6 |
Audi A6 3.2
FSI quattro |
4915 |
1855 |
1455 |
7.02 |
53.27 |
374 |
2,135,383 |
26,144 |
8.7 |
BMW530i |
4855 |
1845 |
1470 |
6.88 |
51.96 |
357 |
2,265,861 |
29,221 |
8.8 |
NOTE) |
1.表記の数値はLEGEND(04/10時点)、Audi A6(04/8時点)、BMW545i(03/9時点)の各メーカー公表値
を用いた計算値である。但し、LEGENDの価格面における計算値は、オプションのレザーパッケージ及びエクスクルーシブパッケージ(パワートランクリッド、電動リアサンシェイド、
リアドアウインドウ・サンシェイド、本木目パネル <インストルメントパネル>)を
車両本体価格に含め、算出した。(外観寸法及び燃費は、カタログ記載値の通り。レジェンドの車両重量は、メーカーオプションを組み合わせて装着した場合の最大車両重量1800Kgを用いた。)
2.価格面の各数値の算出に当たっては消費税を含まない車両本体価格を用いた(Audi
A6の場合、車両本体価格が消費税込みとなっている為、消費税5%を除いた額をベースとして算出した。) |
動力性能面を上表C値(動力性能の一つの指標)で比較すると、もちろん排気量の差もあるが、レジェンドの値はアウディA6
3.2FSI quattro、BMW530iを悠々と凌駕していることが分かる。また価格面ではリッター当たり価格&馬力当たり価格ともレジェンドが優位で、2車を大きく引き離している。但し、燃費についての優位性が認められないのは、惜しいところだ。レジェンドは世界初のSH-AWDを搭載し、他車を圧倒する走行性能を獲得しながらも、大変お買い得な高級車であることを上表の数値が示している。
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ROAD IMPRESSION(ホンダレジェンド・ロードインプレッション)
試乗車には、オプションのレザーインテリアとアドバンスパッケージ(インテリジェント・ハイウェイ・クルーズコントロール、追突軽減ブレーキ+E-プリテンショナー<運転席/助手席>)が装着されていた。
シートの着座感がいい。ゆったりとくつろげる座り心地だ。パワーシートの作動音にはマジェスタのようにことさら気を使った感じは受けなかったが、個人的にはなんら問題はなく充分である。要は、クラウンロイヤル、アスリートと同等程度であり、全く問題はない。
アクセルを僅かに踏み込んだときのフィーリングであるが、急激な回転上昇による飛び出し感はなく、緩々と車を転がすことが出来る。こういった当たり前の資質が高級車であっても備わっていない車もあるのであえて取り上げておく。次にアクセルを深々と踏み込んだ時のレスポンスは鋭く、かつ滑らかにエンジンが立ち上がっていく。この感覚は、ただ単に鋭いと感じさせるだけのものではなく、エンジンの回転上昇とリンクして車が滑らかに前に押し出されていくという極めて洗練されたものだ。この滑らかさがレジェンドに上質で品位のよさをもたらしている。ただ単にレスポンスが鋭いだけでは、体がアクセルのON、OFFで前後にふられて品位を損なうのだが、レジェンドにはそれがない。車がよく調教されていると感じさせるのだ。人の感性系にまで踏み込んだ制御プログラム!?が一役かっていると想像する。この鋭くかつ滑らかな品位のある加速感は、今まで味わったことのないレジェンド独自のものといってよい。BMW、Audi、CROWN(ATHLETE、MAJESTA)いずれとも異なる味なのだ。こういったレジェンド固有の味を生み出している要素の一つとして走行状況に応じて、4輪への最適な駆動力配分を行うSH-AWDシステムが大いに貢献しているとみていいだろう。高回転時のエンジン音について付け加えておくが、澄んだ透明感のある音質で加速時の心地よさと美味くリンクしている。
次に5速ATだが、変速ショックは巧みにコントロールされ、しっかりと抑えられている。スタート時においてアクセルを一定量踏み込んでの加速感は、実に滑らかでシフトアップしていくプロセスすら感じさせず、加速の連続性のみが印象的だ。キックダウンに際してもショックを感じさせずにかつ変速レスポンスはすばやい。中間加速域からアクセルを開けていったときにもシフトアップを意識することは皆無で、滑らかな加速フィーリングのみがドライバーを刺激する。実は、ステアシフトを試す機会を失ってしまったのだが、それほどDレンジ固定でのシフトフィーリングは、素晴らしかったといえる。要するに、Dレンジ固定でも充分にレジェンドの能力を引き出すことが出来るということなのだ。
ステアフィールであるが、まず驚いたのは、直進性である。ステアリングから手を離しても全く問題ないかのような直進性の確かさが感じられたことだ。(ここにも恐らくSH-AWDが貢献していると推測する。)ステアリングからは適度な重さが手の平に伝わり、路面からのコンタクト感もある。中には重いと捉える人もいるかもしれない。確かにクラウンよりは重いが、個人的には、しっかり感のあるレジェンドの重さの方が好みだ。(但し、試乗車のパワステは、油圧式、クラウンは電動アシストである。)車線変更時にステアリングの角速度を故意に速めてみると、車体の反応は鋭い。アクティブに走ることに悦びを見出す人には、こういった特性は歓迎だろう。但し、高級車の身のこなしとなるともう少し穏やかな特性の方が望ましい。
さて肝心のSH-AWDの走行感覚に関してだが、試乗コースには気の利いたワインディングはなかったので、交差点の右左折においてややアクセルを開き気味(といっても感覚的に6割程度だ。)にして突っ込んでみたのだがステアリングを切った方向、すなわちドライバーが向いたい軌跡の方向に車が極自然に吸い寄せられていく感覚だ。決して小振りなボディではないレジェンドだが、SH-AWDによって水を得た魚のごとくすばしっこい動きをするのである。こういったSH-AWDの特異な走行感覚の片鱗に触れただけで否応なくワインディングロードを本気で攻めてみたいという誘惑に駆られてしまうほどにSH-AWDが生み出す異次元の走行感覚は、新鮮で魅力的だ。
さてブレーキフィーリングだが、約40q/h及び約100Km/h各々のブレーキングにおいてコントロール性がよく好フィーリングであった。つまり止まることをことさら意識することがないので走りに集中することが出来る。(もちろん市街地走行であり、ワインディングロードでの過酷なブレーキングについては未確認である。)
乗り味についていうと、ディーラーを出て若干凹凸のある荒れた路面をゆっくり(30q/h程度)と転がしていると路面からの入力は比較的大きめに感じた。メインの試乗コースへ出てからは、乗り味は一変した。確かに比較的凹凸の少ない舗装路ではあったが、全体的に滑らか(フラット感あり)でしっとりとした質感の高い乗り味を提供してくれた。先に述べた低速度走行時の凹凸通過における乗り味については、もう少し角が取れた方向に改善してくれることを期待したい。
最後に、高級車としての品位とスポーツカーにも迫る走りの楽しさを見事に調和させた世界屈指の大型高級セダン、レジェンドを生み出したHONDAにあらためて敬意を表したい。
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