HYUNDAI XGは、韓国の現代自動車が製造している高級車で日本へのお披露目は、2001年5月である。当
初の価格(消費税抜き)は、3リッターの高級車としては異例の低価格で、ベースグレード(パワーシート付、トリップコンピューター無し)で\2,398,000、ベースグレードに本革仕様+シートヒータ付で\2,498,000でリリースされた。今回試乗したXGは、フロントグリル、フロントバンパー、ヘッドライト廻り(ウインカー部位のレンズカット)、リヤトランク、リヤバンパー、テールライト、サイドプロテクションモール等の一部に変更を施したマイナーチェンジ車で03年3月に新たに日本に投入されたモデルである。タイヤは、グレードの違いによる15インチ仕様を無くし205/60R16に統一されている。3.0リッターエンジンの出力が192ps→184PS、トルクが26.5Kg.m→25.8Kg.mに変更された。又、新たに2.5リッター仕様を追加しラインナップが強化された。価格(消費税抜き)は2.5リッター、3.0リッター仕様共に本革シート・フロントシートヒータ付(3.0リッターは、パワーシート付&トリップコンピュータ付)で\2,198,000、\2,648,000である。マイチェン後の3リッター車の価格(消費税抜き)は、装備面での充実を図り改定されている。(トップグレード300Lではマイチェン前:\2,798,000、マイチェン後:\2,948,000となっている。)主な追加装備は、オートライトコントロール、リヤシートの中央席も含めてELR3点式シートベルト、ISO
FIX対応チャイルドシートアンカーでトップグレードの300Lにのみ電動式チルト&テレスコピックステアリング(メモリー付)が標準装備となった。又、トリップコンピューターが3.0リッターベースグレードの300にも標準装備された。
2.5リッター仕様車はパワーシートとトリップコンピューターは付かないが、オプションの本革シート+フロントシートヒータ付で\2,198,000は、なかなか魅力的な価格ではある。
TOYOTA CROWN ROYAL(ZERO CROWN)との比較
ここで、XGの位置付けを確認する為に価格面、動力性能面、燃費等についてCROWN
ROYAL(ZERO CROWN)と比較してみた。(下表参照)
車種 |
外観寸法 |
動力性能面 |
価格面 |
.燃費
(km/L) |
全長
(mm) |
全幅
(mm) |
全高
(mm) |
A
重量/馬力
(Kg/PS) |
B
重量/トルク
(Kg/Kg.m) |
C
A×B
(Kg2/PS・Kg.m) |
価格/リッター
(¥/L) |
価格/馬力
(¥/PS) |
HYUNDAI
XG250
|
4875 |
1825 |
1440 |
9.40 |
68.56 |
644 |
881,669 |
13,162 |
9.5 |
CROWN
2.5ROYAL
EXTRA
|
4840 |
1780 |
1470 |
7.21 |
58.49 |
422 |
1,260,504 |
14,651 |
12.0 |
HYUNDAI
XG300L
|
4875 |
1825 |
1440 |
8.97 |
63.95 |
574 |
991,925 |
16,022 |
8.6 |
CROWN
3.0ROYAL
SALOON |
4840 |
1780 |
1470 |
6.17 |
49.38 |
305 |
1,336,005 |
15,625 |
11.8 |
NOTE) |
1.CROWN2.5 ROYAL EXTRAの価格には、標準装備の電動ランバーサポート、VSC&TRC、電動格納式リモコンカラードワイドビュードアミラー(ヒーター付レインクリアリングミラー)を含む。(本革シート+シートヒーターは、非装着)
2.CROWN3.0 ROYAL SALOONの価格には、標準装備の電動シート、電動ランバーサポート、VSC&TRC、足元照明付電動格納式リモコンカラードワイドビュードアミラー(ヒーター付レインクリアリングミラー)、電動チルト&テレスコピックステアリング(オートチルトアウェイ&リターン機能付)を含む。(本革シート、ポジションメモリー機能、シートヒーターは、非装着)
3.HYUNDAI XG250の価格にはオプションの本革シート(非電動)+シートヒーター及び標準装備のTRCを含む。(VSC非装着)
4.HYUNDAI XG300Lの価格には本革電動シート(メモリー付)+シートヒーター&電熱曇り止め付電動格納式リモコン・カラード・ドアミラー(メモリー付)、電動チルト&テレスコピックステアリング(メモリー付)及び標準装備のTRCを含む。(VSC非装着)
5.表記の数値はHYUNDA XG(04/9時点)、CROWN(03/12時点)の各カタログ記載値を用いた計算値である。但し、価格面についてはHYUNDA
XG(04/9時点)、CROWN(04/4時点)の各メーカー公表値を用いた計算値である。(外観寸法及び燃費は、カタログ記載値の通り。)
6.価格面の各数値の算出に当たっては消費税を含まない車両本体価格を用いた。 |
上表から価格面を見るとXGは高級車としての装備を充実(NOTE参照)させながらも価格を抑えていることがわかる。(価格/リッター欄参照)しかしながら、動力性能面及び燃費の比較においてはCROWNが優勢である。燃費についていえば、重量差(CROWNに対して2.5リッター車で+20Kg、3.0リッター車で+70Kg、XGが不利)とCROWNが電動パワステを採用していることが大きな開きを生んでいる主要因には違いないが、XGと同等馬力、同等重量の日本車のレベルと比べると努力の余地が残されている。
エクステリア(XG300)
一見したエクステリアの雰囲気は、意外に押し出し感がある。特にリヤビューは、高級車としてのある種の威圧的なムードを漂わせておりXGのデザイン上の独自性を評価したい。またXGは、全幅に対する全高の割合が比較的抑えられている為、視覚的な面での安定感に繋がっている。ちなみにXGの全高/全幅の数値は0.79でこの値はVOLVO
S60と同値である。(CROWN:0.83、BMW530i:0.80)
個人的に気になるのはドアミラーの装着位置である。通常のサイドウインドウの三角部分ではなく直接ドアへ装着されている。カタログには“空気力学を生かしたドアミラー”と謳われているので相当の理由があったとも考えられるが、全体のフォルムを眺めたときにどうも一体感のない突起物のように映ってしまうのだ。この点は、高級車感としてはマイナスだと思う。実は、HYUNDAI
COUPEも同様にドアミラーが直接ドアーへ装着されているのだが、COUPEの場合は、全体のフォルムとのバランスが取れている。
ここでドアの締まり音について述べておきたいのだが、試乗車では運転席側前後のドアの締まり音が明らかに異なっていた。前後の締まり音の違いも当然高級感を阻害する要因となるが、締まり音そのものを重厚で深みのある音質としなければ、高級車としての資質を問われることになる。
インテリア(XG300)
インテリアは、一世代前の日本車を連想させるレイアウトで、高級感の演出を木目調パネルに依存した手法は、オーソドックス過ぎて高級車としての感動はない。更にいえば、シフトゲートのプレートのデザインは、表面処理、形状、大きさを含めて高級なイメージをもたせる工夫が不足している。P,R,N,Dの文字についてもセンスのよい文字サイズを望みたいところだ。
パワーウインドウについて気になったのは、挟み込み防止機構がない為にウインドウアップ時にはスイッチを操作し続けなければならない。確かにカタログには運転席オートダウン機構と謳っている。(ワンタッチ式とは謳っていない。)安全のための苦肉の策は理解するが、高級車感を損なう点でのマイナス要因には違いない。
もう一点気になるのが足踏み式パーキングブレーキのレイアウトと解除時の低級音である。まずレイアウトであるがこのペダルが邪魔をして左足の居場所に苦慮する。ペダルストロークが長過ぎるのか?解除後のペダル位置が床から高い位置に設定されている為、パーキングブレーキ使用時には左足を床から大きく引き上げなければならず、非常に不自然な姿勢を強いられる。是非改善してもらいたい。解除後の低級音であるが“バーン”と叩きつけられたような非常に違和感のある音なのである。XGが高級車であると豪語するのであれば、こういった低級音についても充分配慮する必要があろう。
本革シートの表面の質感は、どちらかと言うと硬質でもう少しソフトな方が温かみが出るのだが・・・・。個人的にはいかにも革という匂いが室内全体に濃く立ち込めるのは、いささかくどい感じがした。このへんの味付けは大変難しいが、高級車としての課題の一つであろう。
パワーシートの作動音は、試乗車に限っていえば可もなく不可もなく中級レベルと感じた。高級車としての作動音は更なる低騒音化が望ましいわけだが、この程度の作動音であれば購入を左右する要素にはならないだろう。
エアバックについて気になるところを述べておくが、運転席・助手席:フロントエアバック&サイドエアバックを標準で装備するが、カーテンシールドエアバックの設定はない。カーテンシールドエアバックは高級車の安全装備としては是非とも標準装備を望みたいところだ。但し、運転席・助手席のサイドエアバックはウインドウまでカバーする大型のもので頭部の保護を考慮したものとなっており興味深い。
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ROAD IMPRESSION
試乗した車は、3.0リッターのXG300である。
本革シートへの着座感は、革の質感が硬質でやや厚ぼったく感じる為か?心地よくない。生意気な発言で恐縮だが、革の質感、支え方、力の分布はどうあるべきか?など高級車のシートはこうあるべき!というところまで考えが及んでいないような気がした。
さてあいにく雨天時での試乗となったのだが、初めにワイパーの作動音についてふれておくが、モータ作動音のレベルは、高級車としては努力不足と感じた。こういった低騒音化への取り組みは難題ではあるが高級車を標榜するのであれば避けて通れない課題である。
ゆっくりとアクセルを踏み込み、試乗コースへ出た。僅かなアクセルの踏み込み量に過敏な反応を示すことはなく、緩々と走行させることが可能だ。こういった特性は、高級車の資質としては重要だ。
次にアクセルを全開近くまでいっきに踏み込み、加速させてみた。エンジンのツキはなかなかいい。瞬時にエンジンが立ち上がっていくさまは、アクセル全開の意志と連動していてタイムラグを感じさせない。しかも加速はリニアだから違和感がない。立ち上がりのタンジェントは、人の感性に合致しておりエンジンは、数値以上にトルクフルでよく吹け上がる印象をもった。これは、しつれいだが意外な好印象であった。試乗コースは、3車線で、やや混んでいたのだがアクセルワークに忠実にトルクフルに立ち上がるエンジンのお陰で車線変更等を余裕を持ってこなすことが出来た。
エンジン音は、室内に比較的入ってくるが不快な低級音ではなく、むしろ低く力感溢れるエンジン音なので、嫌味はない。音を何処まで押さえ込むか?という課題に対しては、高級車であれば発生源の騒音レベルを可能な限り下げるのは当然のことだが、ことエンジン音などに関していえば、ただ単に押さえ込むのではなく、むしろドライバーにとって心地よい音源を拾い上げ残すべきと考える。このXGの場合でいえば、エンジンの音質を更に磨き上げ、騒音レベルを極力押さえ込んでいければ、面白いと思う。
ステアフィールは、やや重めであり精緻な印象はないが中立付近からの僅かな切角に対しての反応は穏やかだ。角速度を速めたときの姿勢変化も急激ではなく穏やかに収まる印象で不安感を抱くことはなかった。ステアフィールは、総じてクイックな特性ではなく万人受けする安定指向のセッティングだ。また直進時においてスロットルを大きく開けてみたがトルクステアは感じられず、TCSが介入したと意識することもなく落ち着いたステア操作が可能だ。又、交差点を右折する際にアクセルを無造作に開けてみたが、TCSの介入をやや意識するもののステア操作への違和感はほとんど感じられなかった。
乗り心地についていえば、サスペンションはソフトな印象なのだが、だからといって単にフワフワした感じではなく意外にダンピングが効いていて路面との追随性にも優れていると感じた。凹凸に対してもストロークを生かしてスムーズに吸収しているように感じられた。個人的にはゼロクラウンのどこか捕らえどころのない洗練され過ぎた足回りよりもソフトな乗り味のなかに意外な粘りを見せるXGの足回りの方がむしろ個性的で好感が持てる。あくまで街の試乗屋の感性で申し上げれば、このXGの乗り味には人の感性に何かを必死に訴えようとしている人間臭さが感じられるのである。
さて5速ATだが変速時のショックは、少なく出来は悪くない。だが停止時にN→Dへシフトさせたときにショックがやや大きいのは、残念だ。マニュアルモードでのシフト操作は、レスポンスがいい。但し、速度に対するエンジン回転数の関係からシフトダウンが拒否されてしまい、肝心なところでエンジンブレーキが使えない事態が頻繁にあった。やや安全な方向に設定しているのかもしれないが、マニュアルモードを積極的に使いたい向きからは、不満が出るだろう。
ブレーキについては、2年前のマイナー前のXGではブレーキペダルを踏み込んでも初期制動力が立ち上がらずに空走距離が長く感じられたが、今回の試乗車では解消されていた。したがって市街地走行におけるブレ-キングには不満はなかった。
総合評価&まとめ
総合的に見て、XG300のハードウェア、すなわち走る、曲がる、止まるという基本性能の出来は決して悪くはないと思う。(但し、高速走行に於ける評価は未確認だが・・)問題は、高級車としての資質を高め、人の感性に訴えかけるHYUNDAI独自の高級車像を構築することが出来るかだ。特にブランドイメージにうるさい日本のマーケットで成功するには低価格化路線だけでは通用しない。低価格化路線をもちろん歓迎しないわけではないが、+α(高級車としての欲求を満たすもの)が不可欠なのだ。
XGは1998年に初公開されてから今年(2004年)で6年になる。恐らくHYUNDAIも気づいていることだろう。次期XGは、他車を圧倒する?!HYUNDAI独自のエクステリア&インテリアで武装し、真の意味でのコストパフォーマンスを高めた高級車として姿を現して欲しい。個性的な高級車として日本車を刺激する興味深い存在になることを期待したい。
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