フォードフィエスタは、1976年にヨーロッパ市場に投入されて以来、四半世紀以上に渡り高い評価を獲得し続けているロングセラーカーで、これまでの累計生産台数は1000万台以上にのぼるという。今回試乗したフィエスタは、2004年4月に日本に導入された3代目フィエスタである。
マツダデミオと基本骨格を共用化したと聞いているが、ホイールベース、トレッドなど微妙に異なっており興味深い。デミオとのディメンション比較結果は下表の通り(参考まで)
車名 |
外観寸法 |
ホイールベース |
トレッド |
タイヤサイズ |
全長 |
全幅 |
全高 |
前 |
後 |
フィエスタ |
3915 |
1685 |
1445 |
2485 |
1465 |
1435 |
175/65R14 |
デミオ |
3975 |
1695 |
1530 |
2490 |
1475 |
1450 |
175/65R14 |
さて、エクステリアであるが、個人的にはどうということはなく感動するものでもない。オーソドッ
クスなヨーロピアンデザインといったところだ。この手のハッチバックには、もう少しスタイリッシュ・・・少し驚かされるくらいのスタイリングが欲しい。このように感じるのは、ティーダの様なヨーロピアン調のデザインを取り入れた日本車が珍しくなくなったというのも一因だろう。
インテリアについては、合理的に手堅くまとまっている感じで面白みに欠けており、昨今の日本車のデザインの方が明らかに華がある。今やすっかり贅沢になってしまった日本人のハートに訴えかけることは大変難しく、価格的にみた装備の充実度においても明らかに日本車が有利である。フィエスタの魅力は、ヨーロッパの道を知り尽くした奥深い走りの性能にこそあると私は思うのだが、走りの性能となると車好きは別として、なかなかすんなりとその良さを理解することが出来ない面があり、フィエスタの魅力は日本における大衆的価値観とはかけ離れた存在ということになるのかもしれない。もしフィエスタで日本のマーケットを本気で攻略するつもりならば、質の高いコストパフォーマンス性を探求する必要があるだろう。
グレードは、1600GLXと装備面での充実を図った1600GHIA(ギア)の2種類である。装備面での主な相違点についていうとフロントフォグランプ(GLX;未装備)、フルカラードフロント&リアバンパー(GLX;ハーフカラード)、カラードテールゲートフィニッシャー&クロームアクセントフロントグリル(GLX;ブラック仕上げ)、AM/FMインダッシュ6連奏CDチェンジャー+4スピーカーシステム(GLX;フロント2スピーカーシステムのみ標準装備)、オーディオリモートコントロール(GLX;未装備)、フロントマップランプ(GLX;未装備)、SRSサイドカーテンエアバックシステム(GLX;未装備)、アルミホイール(GLX;フルホイールキャップ)などである。価格は、車両本体価格(消費税抜き)でGLX;\1,695,000、GHIA;\1,865,000である。(価格差;\170,000)
トランスミッションの設定は、電子制御4速オートマチックのみとなっている。
ボディーカラーは、ヨーロピアンカラーと称する8色が用意され、3タイプのインテリアカラーバリエーションとの組み合わせとなる。但し、ボディーカラーは、GLX、GHIA夫々に各5色が割り振られ、グレードの違いでユーザーが選択できない色が出てくる。日本車の場合は、グレードを問わず任意にボディーカラーの選択が可能な車種がほとんどであることを考えると、きめの細かい配慮という点では見劣りしてしまう。
安全装備としてのエアバックの設定についてだが、GHIAであればフロント、サイド、カーテンの3点セットが標準装備となるが、GLXではフロント、サイドの2点は標準装備だが、カーテンの設定はなく(オプションでも用意されない。)同じフィエスタとしての安全への配慮に一貫性がないのは気になるところだ。
イモビライザーについては、いずれのグレードにも標準装備となっている。
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ROAD IMPRESSION(フォードフィエスタ・ロードインプレッション)
試乗車は、GLXでナビゲーションが装着されていた。
はじめにシートの感じだが、中庸でけっして硬い部類ではなく、かといってソフトでもない。だが沈み込んでいくということはなく、座りごこちは良好だ。長距離走行でも疲労感は少ないかもしれない。
走り出してから感心させられたのは、ATの出来のよさだ。4速AT・・何の変哲もないものだが、これが実にいい感じなのだ。実にスムーズで、4速ATとは思えない。マツダの4ATもよく出来ているが、今回試乗したフィエスタのフィーリングの方がいい。キックダウンの際にもショックを巧みにコントロールしている様を感じることが出来るし、切り替えのレスポンスにも優れている。また、信号待ちなどでの各ポジションへのシフトの際にもショックは全くといっていいほどに消されている。なかなか制御系にも気を使っていると感じさせる上々の出来栄えである。さらに付け加えれば、いわゆるすべりを伴うトルコンということを意識することがないのでダイレクト感があるスポーティーなドライビングを楽しむことが出来るのである。
次にアクセルワークについていえば、アクセル開度に対して人の感性に実に忠実にレスポンスしてくれる。要するにアクセルの踏み込み量に対する反応が、ドライバーの目論見とジャストフィットしている感じなのだ。この自然な特性は、実に気持ちがいい。アクセルをコントロールする楽しさが味わえる素晴らしい味付けであるといっておく。
アクセルワークに鋭く反応するエンジン、生き生きしていて、ドライバーをファンな気分にさせる。以前(01年)、フォードフォーカスの1.6L車に試乗したときと比べると、フォーカスでは明らかに力不足を感じた同じ登坂路をフィエスタでは、アクセルに僅かな踏力を与えるだけでエンジンはなんらストレス無く軽快に力強く吹け上がったのだ。これには正直驚かされた。確かに車両重量の差を無視できないが、それにしても、その当時のフォーカスは、2.0Lでなければ力不足を感じたものだったことを考えると格段の進化といえよう。これはフィエスタに採用された電子制御式スロットルコントロールやエンジンと統合制御される4速ATなどの精緻な電子制御化技術に因るところが大きいといえるだろう。
一点余計なことを言わせていただくが、吹け上がり時のエンジン音がややノイジーに感じる点だ。しかしながら、これを愛嬌といって聞き流せるほどにフィエスタのエンジンは元気がいい。
ブレーキフィールは、人の感性に忠実なタッチでコントロールしやすい。好フィーリングといっておく。
ステアフィールについては、やや重めでどっしり感がある。好みの分かれるところだが、落ち着いた安心感が高いフィールである。やや角速度を速めた車線変更を試みたが、飛びぬけたレスポンスを示すことはないが、単に穏やかという表現は当たらない。適度にスポーティーなレスポンスを示してくれるのだ。コーナーRに対して、ステアリングを合わせやすく、まさに適度なスポーティー感を味わうことが出来、意外に楽しめるステアフィールなのだ。轍で容易にステアリングがもっていかれるようなことも無く、頼りがいのあるステアフィールだ。
乗り味に付いていえば、感心したのは凹凸通過のいなし方である。実にうまく角が取れた形でまろやかさだけがドライバーに伝達されるのだ。ショックの吸収の仕方は、最後まで面倒をみる・・しっぽまで手を抜かないという感じだ。つまり食べ残しなしで、すべてがきれいに片付けられてしまう感じなのだ。この乗り味は、なみの1.6L車ではないしたたかさだ。足がよく仕事をしているのでフラット感が高い。こういった乗り味は、何処までもフィエスタを走らせたくなる誘惑に満ちている。
フィエスタという車は、内外観的には目を引くものはないのだが、こと走りに関しては、欧州育ちの素性の良さを見せ付けてくれた。ファンな移動体としてのフィエスタは、並の日本車では到底太刀打ちできない個性的な魅力溢れる車なのである。
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