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Feb.2005

NISSAN FUGA IMPRESSION
(日産フーガ試乗インプレッション)


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日産フーガ コンセプト/日産の動向と市場の反応/セドリック及びシーマとのディメンション比較
/
エクステリア/インテリア/クラウンとの装備比較/ライバル車との比較


日産フーガ コンセプト

04年10月、”SHIFT_performance(高級車のパフォーマンスをシフトする。)”を掲げ、日産フー
ガ(FUGA)が市場へ投入された。フーガは、イタリア語の音楽形式名(FUGA:独立性の強い複数の旋律を調和させて楽曲を構成する作曲技法による多声音楽の形式)である。カタログにあるフーガのコンセプトには、「パフォーマンスをシフトすることで、官能に響き合う高級車を創る。」とある。目指したものは、「官能を刺激するドライビングの高揚感はあるか?」「官能を満たす上質さと心地よさは、あるか?」「官能に響く最先端の性能と機能は、あるか?」の問いかけのすべてに応えた車創りであり、これまでの既成概念にとらわれることなく、全く新しい価値基準から高級車のパフォーマンスをシフトしたという。官能に響き合う高級車=FUGA・・・このネーミングは、なかなか洒落ている。洒落ているだけに逆にFUGAのもつ荘厳で格調高い雰囲気を受容出来る車であるかが問われることになる。しかしながら、こうした人の感性を刺激する車創りへと情熱を傾け、挑戦する姿勢は、大いに歓迎したい。

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日産の動向と市場の反応
 
周知のとおり日産は、180計画のなかで04年10月〜05年9月末までの1年間で世界での販売台数を01年度比100万台の増販を目論んでいる。これを達成する為の施策の1つとして日産は04/9に6台(MURANO,FUGA,TIIDA,TIIDALATIO,LAFESTA,NOTE)の新型車を同時にお披露目させるという異例のイベントを日本で開催し、「日産は、・・・・をシフトする。」と謳ったイメージ戦略をあらためて強力に打ち出した。(戦略上、セド・グロの名は、不要となった!?)ところで私見だが「・・・をシフトする。」というフレーズは、旬であるととらえている。なぜならば、今、社会の動きがジャンルを問わず、組織にしろ個人にしろ既成の路線とは異なったアプローチによる革新を求めてシフトする方向へと動きつつあると考えるからだ。どのようにシフトするかは別として、各人のハートに届きやすく共感しやすいフレーズであることは確かだ。もちろんシフトするベクトル方向がキーとなるわけだが、”コンパクトカーの質をシフトする”と日産が謳ったティーダは、04/10、11、12の各月の国内新車販売台数ランキング(参考サイト:自販連ランキング)で3位、をキープ、05/1のランキングでは2位(1位のカローラにあと35台と肉薄)に登りつめる好調ぶりだ。これすなわち、キーとなるベクトル方向が大衆のハートと見事に一致した”シフト効果”であるといっていいだろう。
さてFUGAの11月、12月の国内新車販売台数ランキングをみると11月は、12位にフーガ(7388台)、宿敵!クラウンは5位(8647台)、12月は、フーガ19位(4455台)、クラウン9位(6351台)であった。11月、12月ともに順位で単純に比較すれば、クラウンに及ばない結果だが、クラウン購入者層とは異なったユーザー層(セド・グロからの乗り換え組を含む)をフーガが堀起こしたとみていいだろう。12月は、クラウン、フーガ共に台数を落としているが、11月比でみた落ち込み率は、市場投入から約1年になるクラウン;約26.5%に対してフーガ;約39.7%で、新車効果の急速な薄れが気になる。(ちなみに05/1のランキングでは、フーガ28位(2861台)、クラウン10位(5833台)であった。)やや判官びいきかもしれないがフーガの”シフト効果”については、クラウンとは異なる高級車像への関心を呼び起こしたという点で一応の評価を与えたい。(フーガは、2005年次RJCカー・オブ・ザ・イヤー<日本自動車研究者・ジャーナリスト会議主催>を受賞した。これは”シフト効果”の成果といえよう。)

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先代のセドリック及び現行シーマ(参考)とのディメンション比較

(下表参照)
                    
項目 A B 参考 差(A-B)
フーガ350XV
(2004年モデル)
セドリック300LV
(1999年モデル)
シーマ450XV
(2001年モデル)
全長(mm) 4830 4860 4995 -30
全幅(mm) 1795 1770 1845 +25
全高(mm) 1510 1450 1490 +60
ホイールベース(mm) 2900 2800 2870 +100
トレッド前/後(mm) 1540/1555 1510/1510 1580/1560 +30/+45
室内 長さ(mm) 2140 1905 2000 +235
幅(mm) 1535 1465 1530 +70
高さ(mm) 1240 1180 1200 +60
先代のセドリック比でみると、
全長-30mmに対して、室内長+235mmUP
全幅+25に対して、室内幅+70mmUP
全高+60mmに対して、室内高+60mmUP
ディメンションの努力シロを整理すると長さ方向で+265mm幅方向で+45mm高さ方向では±0mmとなる。
先代のセドリック比+235mmUPの室内長2140mmは、シーマより140mm長く、クラウンと比較しても+70mm凌駕している。先代のセドリックは、V型6気筒エンジンだけではなく直列6気筒エンジンを搭載するグレードを残していたためにレイアウト上の制約があったことは、否めない。一方フーガは、V35スカイラインから採用したV型6気筒エンジン+FMパッケージ(Front Midship)+ロングホイールベース化という設計思想の統一化が功を奏し、室内長の拡大に繋がった。また、フーガの室内幅1535mm(クラウンと同等)についてもシーマ+5mm上回っており設計的な努力シロは大きい。

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エクステリア
  
一見するとティアナ風のシルエットが混在しており差別化という観点からするとマイナス点だ。リアドアのカッティング形状、ドアノブ廻りの形状、リアサイドガラス等は、ティアナと酷似している。日産のセダンのシルエット格あるべしという思想からの確信犯かもしれないが、上述したフーガコンセプトからすれば、フーガは、どの車にも似ていないフーガとしての存在価値を全面に打ち出してこそ、真のシフトといえるのではないだろうか?リアのテールランプ形状もシーマ+スカイライン+ステージア風でフーガとしての独自性が感じられない。(これも確信犯かもしれないが・・・)
日産のデザインは、ゴーン改革路線のもと魅力のあるものに変身してきたことは認めるが、今回のフーガのエクステリアに見られるような、妙なデザイン思想の統一化という面で納得がいかないところがある。このようなデザイン上の思想の統一化には、街の試乗屋如きが生意気な発言ととられたとしても苦言を呈しておきたい。
もう一点余計なことを言わせていただくが、XVとGTの2シリーズに対して差別化を図る為にフロントグリル、フロントバンパー、ヘッドランプ、テールランプ(GTのみ高輝度LEDリヤコンビネーションランプを採用)を僅かながらに変更しているのだが、部品統合化の思想に逆らってまで実施する効果(マーケットの反応)があるとは考えにくい。XVとGTでは350GTスポーツパッケージを除いてサスペンション等の仕様に変化はなく(カタログ上、350GTスポーツパッケージを除きXVとGTのサスペンションは同一)ユーザーサイドからみればクラウンロイヤルとアスリートほど違いがないことから、XVとGT(350GTスポーツパッケージを除く)による差別化に対してあまり期待するところがないのだ。このXVとGTの2シリーズ設定の陰にクラウンロイヤル、アスリート及びマジェスタがちらついたとしたら大変残念だ。僅かな部品の小変更(部品メーカーにとっては大変だ。)によってユーザーが期待していない意味のない差別化(メーカー側の押し付けに近い)を図るのではなく、XVとGTを統一し、コンセプトに謳うFUGAの顔を明確にすべきであったと考える。また、ユーザーサイドとしては、部品統合化によって価格が抑えられるのであれば、よほど有り難いのである。グレードについて、勝手を言わせていただければ、XV、GTシリーズをやめて、フロントグリル廻りは、共通顔(FUGAの顔:XVまたはGTに固執するというのではなく、なにがFUGAにとって最良の顔なのかを追い求め、1本に統一することに価値がある。)に統一してFUGA250、FUGA350、FUGA350 FOUR、FUGA350 VIP、FUGA350 SPORTSPACKAGEとしてよりFUGA単体としての独自性を極めた方向にして欲しかった。

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インテリア
   
インテリアは、エクステリアとは異なり、フーガとしての独自性が強く感じられる。高級車を豪語するならば、他車との差別化は重要だ。この点からすれば、どの車にも似ていないインテリアをもつフーガは、評価出来る。また、フーガコンセプトで謳う”高揚感”の演出は、遊び心に満ちているものだ。ソーラーエクリプスメータは、着座したドライバーを迎え入れる儀式か!?外周のみをオレンジ色の光で包み込み浮かび上がらせる。エンジンスタータースイッチを押すとメーターの指針が現れると同時に、その指針は、一瞬振り切り状態になり、日常のなかに忙殺され閉じ込められていたドライバーの闘争本能を目覚めさせる。こうした演出は、生来無邪気な男たちの心を擽る。但し、こうした演出は車好きには大歓迎だが、そうではない人間にとってみれば過剰に映り否定的に捉えられるリスクがあるといえる。日産は、この点を承知でフーガのパフォーマンスをシフトした。こうした日産の潔さに賛辞を贈りたい。
さて、内装のコーディネートについてだが、3色の内装(フォーブ、ブラック、シルキーエクリュ)、3種類のフィニッシャー(木目調、メタル調、ピアノ調)、3種類のシート地(本革、モールジャカード織物/ネオソフィール、シルキーダブルラッセル)が用意されていて各々の組み合わせは、メーカー指定とはなるが、夫々に異なった上質感を味わうことが出来、購入時には嬉しい迷いを誘いそうだ。但し、困ったことにXVの内装色は、シルキーエクリュしか選択できない。GTシリーズでは内装色はすべて選択可能だが、ピアノフィニッシャーは、選択できない。妙な言い方かもしれないが、XVとGTの2シリーズがある為にユーザーサイドとしては、内装の選択の幅が狭くなるという矛盾を生んでいるのだ。企業側からの既成のものを押し付けられるようで、個人的には好まない。エクステリアのところでも述べたが、XVか?GTか?ではなくフーガ単体としての内装のコーディネートを楽しめるようにして欲しかった。もう一点付け加えれば、木目調のフィニッシャーは、本木目をオプションで選択可能とすべきだろう。クラウンロイヤル、アスリートが木目調だから、フーガも追随したと感じさせるのは如何なものか!?クラウンシリーズではマジェスタまで登りつめてようやく本木目が標準装備となるわけだから、もしフーガ250、350で本木目を採用すれば、ロイヤル&アスリートを凌駕することになる。ここは、よく考えて、一歩踏み込んで欲しかった。
ナビ等を操作するスイッチ類について付け加えれば、それらが配置されたコントロールパネルがインストルメントパネルセンターからせり出し、操作性を高めており、プリメーラからの設計思想が貫かれている点を評価しておきたい。




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CROWN3.0 ROYAL SALOONとの装備比較(差異のある主たる標準装備のみを抽出し比較)

                               
注)優位性が認められる装備については、その車種名のパターン色と同色とした。

車種名 FUGA350XV CROWN3.0
ROYAL SALOON
備考
車両本体価格
\4,000,000 \4,000,000 消費税抜き
安全装備 バックビューモニター

(カラー、車幅/距離/予想進路線表示付)
オプション
(バックガイドモニター&クリアランスソナー)
クラウン;オプション価格8.7万円
サイドブラインドモニター
(カラー、赤外線LED、
左側車幅/前端表示機能付)
フーガ;サイドミラーに高感度赤外線CCDカメラ内蔵
アクティブAFS ロイヤルサルーンGに
標準装備
クラウン;ロイヤル設定なし
テンションリデューサーELR付3点式
シートベルト
(ロードリミッター付プリテンショナー
シートベルト)
前席 前席・リヤ左右席 クラウン;リヤ左右席にも採用は、評価出来る
後席ELR付3点式シートベルト 左右席 3席 クラウン;中央席標準採用は、評価出来る
ISO FIX対応チャイルドシート
固定専用バー+テザーアンカー
フーガ;オプション設定もない!?
SRSニーエアーバック クラウン独自の安全装備として評価出来る
SRSサイドエアーバック オプション フーガ;標準装備にすべきだ
SRSカーテンエアーバック オプション フーガ;標準装備にすべきだ
頚部傷害軽減シート 運転席&助手席 運転席&助手席、リヤ左右席 クラウン;リヤ左右席標準採用は、評価出来る
ブレーキペダル後退抑制機構&
前席足元衝撃吸収バッド
クラウン;カタログに明記なし
ステアリングコラムコラプス クラウン;カタログに明記なし
ヘッドランプ(ロービーム) クリスタルブループロジェクター
キセノンヘッドランプ (オートレベライザー付)
ディスチャージヘッドランプ
(ハイパーワイド/オートレベリング機能
フーガ;クリスタルブルーの演出
を評価
ヒルスタートシステム
急勾配などでブレーキからアクセルへの踏み替え時に軽いブレーキをかけ後退速度を緩和
させる
クラウン;ドライバーに優しい装備として評価出来る
タイヤ空気圧警報システム クラウン;車に無頓着な人には嬉しい装備だ
車種名 FUGA350XV CROWN3.0
ROYAL SALOON
備考
快適装備 ハンズフリーフォン
(Bluetooth対応)
オプション
(Bluetooth対応)
クルーズコントロール オプション
インテリジェントクルーズ
コントロール
(低速追従機能付)

(標準タイプ)
クラウンオプション:
レーダークルーズ
コントロール
(ブレーキ制御付)
フルオートエアコン
設定温度、吹出し口左右
独立調整機能付
(カタログに特記事項なし)
左右独立温度コントロール
(湿度センサー付)
(ニューラルネットワーク
制御)
クラウン;日射の有無などで上半身
下半身で異なる温度差もきめ細かく制御
マイナスイオン発生装置:オプション
クリーンエアフィルター (集塵機能付)
花粉&脱臭フィルター
:オプション
(防塵脱臭機能付)
ミクロン単位で花粉、
粉塵除去
フーガの
(花粉&脱臭フィルター:オプション)
は、疑問
スイングレジスター
マイルドフロー フーガ;エアコンの風を直接体に
当てることなく、間接風の心地よさ
を実現
パーソナルドライビングポジションメモリーシステム
(ステアリング、運転席、
ドアミラー
オプション
(但しシート&ステアリング)
クラウン;「ドアミラーメモリー機能」は、明記なし
運転席パワーシート スライド、リクライニング、リフター、ランバーサポート、
サイサポート
スライド、リクライニング、リフター、ランバーサポート クラウン;サイサポート明記なし
ナビゲーションシステム カーウィングス対応(DVD)
(8インチモニター)
G-BOOK対応(DVD)
(8インチモニター)
オーディオ インダッシュ6CDチェンジャー、AM/FM電子チューナーラジオ、
6スピーカー、MP3/WMA
再生機能
インダッシュ6CDチェンジャー&カセット・AM/FMマルチ電子チューナーラジオ、8スピーカー フーガ;標準6スピーカは、プアー
(オプション;14スピーカー)
ボイスコマンド機能 オーディオ、ナビ オーディオ、ナビ、エアコン フーガ;エアコンのボイスコマンド
機能なし
車種名 FUGA350XV CROWN3.0
ROYAL SALOON
備考
インストルメントパネル メーター ソーラーエクリプスメーター オプティトロン フーガ;日食のように外周を浮かび上がらせ、エンジンスタート時にはメーターの針を一瞬振り切り状態にする等の演出を評価
時計 アナログ デジタル フーガ;アナログとした拘りを評価
インテリア ステアリングホイール 木目調ディンプル付
本革巻き
本革巻き 好みの問題、優劣評価せず
シフトノブ ディンプル付本革巻き 木目調+本革巻き 好みの問題、優劣評価せず
サイドステップ照明
(前席)
オプション
(スカッフイルミネーション)
抗菌仕様
ステアリング&シフトノブ

(カタログ明記なし)
リヤヘッドレスト 固定式 前後上下調整式/中央席は
格納式
フーガ;前後上下調整式又は上下調整式(左右席)、上下調整式(中央席)は、オプション
センターコンソールボックス 左右独立スライド式アームレスト付2段式 2段式スライドトレイ フーガ;左右独立スライド式アームレストを評価
リヤセンターアームレスト カップホルダー2個、ボックス付 カップホルダー2個、ボックス、各種コントロールスイッチ付 フーガ;各種コントロールスイッチ付は350XV VIPに標準装備
リヤクールボックス
読書灯 (350XV VIPに標準装備)
可動式
車種名 FUGA350XV CROWN3.0
ROYAL SALOON
備考
エクステリア ドアミラー ヒーター付 ヒーテッドレインクリアリング
ミラー
フーガ;チタンクリアドアミラーは、
オプション
リバース連動下向ドアミラー
フロントドア撥水ガラス 超撥水ウインドウシステムは、オプション
その他 タイヤ&ホイール 225/55R17、アルミホイール 215/60R16、アルミホイール
トランスミッション マニュアルモード付フルレンジ電子制御5速オートマチック(アダプティブシフトコントロール) 6 Super ECT+シーケンシャルシフトマチック
NAVI・AI・SHIFT
AI:Artificial Intelligence
クラウン;6速、NAVI・AI・SHIFTを評価
シンクロレブコントロール
(一瞬エンジン回転数を高めてギヤと同期させる)
フーガ;元走り屋さん!?の遊び心を刺激するアイテムとして評価

@フーガの安全装備面の評価は、シートベルト、エアバック、頚部傷害軽減シートの各項目においてクラウンに対して劣っている。特に”サイド&カーテンエアバック”をオプション、”ISO FIX対応チャイルドシート固定専用バー+テザーアンカー”の設定なしでは安全への取り組み姿勢を疑ってしまう。これに対してクラウンは、前席と同仕様のシートベルト及び頚部傷害軽減シートをリヤ左右席にも標準採用、独自のSRSニーエアバックを標準装備するなど安全への気配りが感じられる。
A快適装備面では、クラウンに対してエアコンの風を直接体に当てない”マイルドフロー”、ドライビングポジションメモリー(クラウンオプション;ドアミラーメモリーなし)、運転席パワーシートに”サイサポート付”などを標準装備している点ではフーガが優位である。反面、クルーズコントロールがオプション、フルオートエアコンではクラウンのような”ニューラルネットワーク制御”によるきめ細かな調整が期待できない?(フーガのカタログには明記なし)、エアフィルターについてもクラウンが”ミクロン単位で花粉、粉塵除去フィルター”を標準装備しているのに対して、フーガではオプション設定であることなどはマイナス点である。また、オーディオではフーガ6スピーカー(クラウン8スピーカー)、ボイスコマンドではエアコンの操作不可など高級車としてはプアーだ。
Bソーラーエクリプスメーター&アナログ時計採用への拘りには一定の評価を与えたい。
Cリヤヘッドレストが標準装備では固定式というのは、マイナス点だ。
Dシンクロレブコントロールは、走りに拘ったフーガらしさを伝えるアイテムとして評価しておきたい。

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CROWN3.0 ROYAL SALOON、BMW530i、E320AVANTGARDE、JAGUAR XJ3.0との比較

参考までに6気筒エンジン搭載車であるCROWN3.0 ROYAL SALOON、BMW530i,E320AVANTGARDE、JAGUAR XJ3.0各々のディメンション、動力性能面、価格面及び燃費等についてFUGAと比較してみた。(下表参照)
車種 外観寸法 動力性能面 価格面 燃費
(km/L)
全長
(mm)
全幅
(mm)
全高
(mm)
A
重量/馬力
(Kg/PS)
B
重量/トルク
(Kg/Kg.m)
C
A×B
(Kg2/PS・Kg.m)
価格/リッター
(¥/L)
価格/馬力
(¥/PS)
FUGA350XV
4830 1795 1510 5.89 44.59 263 1,220,698 15,250 9.2
CROWN3.0
ROYAL
SALOON
4840 1780 1470 6.17 49.38 305 1,336,005 15,625 11.8
BMW530i 4855 1845 1470 6.88 51.96 357 2,265,861 29,221 8.8
E320
AVANTGARDE
4820 1820 1435 7.50 52.34 393 2,281,963 32,589 8.5
JAGUAR
XJ3.0
5090 1900 1450 6.71 53.27 357 2,398,371 31,924 7.5
NOTE) 1.表記の数値はFUGA(04/11時点)、CROWN(03/12時点)、BMW530i(03/9時点)、E320(04/7時点)、JAGUAR(04/4時点) の各メーカー公表値を用いた計算値である。(E320のみYahoo自動車カタログを用いた。) FUGAの価格面における計算値は、オプションのインテリジェントクルーズコントロール(低速追従機能付)前席緊急ブレーキ感応型プリクラッシュシートベルト、インテリジェントアシスト、運転席・助手席SRSサイドエアバック、SRSカーテンエアバック、後席ELR付3点式シートベルト(中央席)後席上下調整式ヘッドレスト(左右席&中央席)、前席シートバックグリップベルト、セットオプション価格;\270,000を車両本体価格に含めて算出した。CROWNの価格面については04/4時点のメーカー公表値を用い算出。(外観寸法及び燃費は、カタログ記載値の通り。)
2.価格面の各数値の算出に当たっては消費税を含まない車両本体価格を用いた。(E320AVANTGARDEの場合、車両本体価格が消費税込みとなっていた為、消費税5%を除いた額をベースとして算出した。)

動力性能面を上表C値(動力性能の一つの指標)で比較すると、フーガのみ3.5リッター車ということもあり数値上では他車に対して充分なアドバンテージを有している。
価格面についてもフーガがクラウンを含めた4車種に対してコストパフォーマンス的に凌駕していることが分かる。但し、3.5Lフーガのパフォーマンスに興味を示さない購買層では装備の充実度と価格の絶対値に視点が移り、この点でクラウンは逆にアドバンテージを有しているといえる。クラウン以外の外車3車とあらためて価格面を比較するとリッター当たり価格&馬力当たり価格共にフーガの倍近い数値であり、如何にコストダウンに精進しているか!?確かにBMW、JAGUARの味(E320AVANTGARDE未試乗)は、他車の追随を許さない素晴らしいものと認めつつも、フーガの涙ぐましい努力には敬意を表しておきたい。
燃費については、外車3車をおさえるもクラウンには大きく水をあけられた。これは、排気量差と重量差(クラウン比+70Kg)及びクラウンに採用されている燃費向上策の一つである電動パワーステアリングシステムが搭載されていないことが主要因だ。

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ROAD IMPRESSION(日産フーガ・ロードインプレッション)
試乗車は、排気量3.5リッターの350XVだ。(特にオプションの追加装備はなし)
ドライバーズシートの硬さは、中庸という感じだ。長距離走行時の疲労感は推し測れない。
ドアの締まり音は、特に感性に訴えかけてくる仕掛けは感じられず、取り立てて高級車を意識させるものではない。パワーシートの作動音には耳障りな低級音は感じられず合格レベルだ。(パワーシートの音質を購入の条件にするひとは皆無かもしれないが、高級車ゆえにユーザーに悪い印象を抱かせないことが重要だ。)
さて、ディーラーを出て4〜500mの直線路をアクセル開度6〜7割程度で走行したが、まず感じたことはアクセルの踏み込み量に対するレスポンスの鋭さだ。とにかく車が生き生きしている。アクセルペダルを踏み込めば、一瞬にして目覚め、エネルギッシュな動きをする。走りたいと思う気持ちに忠実だ。こうした演出は、良しにつけ悪しきにつけ元走り屋のお父さんの眠っていた闘争本能に火がつけられること間違いなしだ。(ご家族の方にとっては、悪しきかもしれない!?)だが、試乗をすすめていく中で、高級車にとっての加速のさせ方についての一つの疑問がわいてきた。アクセルの踏み込み量に対してレスポンスが鋭いことが、高級車フーガのコンセプトを象徴しているのだということを開発者に敬意を表し理解したうえで、あえて高級車の加速のさせ方はどのようにあるべきか?をここで考えてみたい。
例によって街の試乗屋の戯言をいえば、アクセルレスポンスが鋭い!=高級車という単純な図式は成り立たないと思うのである。前述した加速のさせ方の領域まで踏み込んだものでなければ、高級車とは呼べない。例えば発進時でいえば、”はじめちょろちょろなかぱっぱ”が高級車の理想だ。ちょろちょろといっても、難しいのだが鋭さを全面否定するのではなく、レスポンスの仕方がソフトでジワリとしたまろやかな感覚<これはけっしてドライバーにタイムラグを感じさせるものであってはならない。適当なことをいえば、初期的な加速度の立ち上がりを連続してRで結び、あるポイント(不快感解放ポイント;このポイントから加速させれば、不快と感じないポイント)からは、タンジェントを上げてリニアな加速体制に入っていくような制御だ。>でスタートして欲しいのだ。特に同乗者は、そう思うだろう。中間速度域からアクセルを深めに開けた場合の加速のさせ方においても速度差を考慮した同様の制御が高級車には望まれる。実際の制御方法は別として、こういった感覚を伴う車を挙げれば、JAGUAR XJ8,XJ6、マジェスタ、レジェンドもいい、BMW530iも単に鋭いだけではない、BMW X3 2.5iもドライバーの感性に実にうまく合致した加速のさせ方を示してくれる。逆に好ましくない車を挙げるが、初期型のBMW330i(過敏すぎて同乗者に申し訳ないほどだったが現行型は、問題ない。)、新型Audi A6 3.2FSIも過敏すぎるので高級車の加速マナーとしては、よろしくないといっておく。
いろいろ勝手なことを並べ立てたが、Zよりもピックアップを鋭くしたフーガは、いささか荒削りであり、高級車の枠をはみ出したものだが、走ることをこよなく愛する車好き(小生も含む)にとっては、いささか矛盾しているように思われるかもしれないが、なかなか興味深い存在だ。
やや横道にそれたが、フーガの走行フィーリングの詳細について試乗インプレッションを続けよう。
変速フィーリングについていうと、スタート時にアクセルを深々と踏み込んでいったときの変速フィーリングは、スムーズだ。気になったことは、走行中にアクセルを浅めから急に深く踏み込んだときにややギクシャク感を伴うことがあったことだ。許せる範囲ではあったが、出来ることならあらゆるアクセルワークに対して変速ショックを極力少なくコントロールして欲しい。高級車を豪語するのであれば、よりシルキーな特性を望みたいところだ。
マニュアル感覚のシフトフィーリングはシフトアップ&シフトダウンともに変速ラグを感じさせず、レスポンスに優れている。フーガの売りであるシンクロレブコントロールは、シフトダウン時に一瞬エンジン回転数を上げてスムーズにギヤとの同期を図る機構だが、これが結構面白く、車好きの男の無邪気なハートをくすぐるのだ。
エンジン音は、あえて室内に侵入させていると聞いたが、個人的にはもっと感性系に訴える音質であって欲しい。せっかくシンクロレブコントロールによるブリッピング音を聞かせてくれるのだから・・。エンジンの吹け上がり感は、3.5リッター重量級のエンジンとしては、軽快感がある。Zよりもレスポンスを高めたというだけあって、確かに鋭く軽快に吹け上がる。ただし、エンジンの回転フィールに精緻なまろやかさが感じられないのは、惜しい。
ステアリングは、適度な重さで路面から外乱を受けることもない。ステアフィールは、路面からの信号を積極的に伝えてくるものではないが、ステアした方向に素直にレスポンスしてくれる極自然なフィーリングは好ましい。気を使うことがない安心感の高いステアフィールだ。例えば、中速コーナリング時にステアリングに軽く手を添えているだけで、実に気持ちよくコーナーをトレースしていく。安心感が高いのでコーナリング中にもさらにアクセルを開けたくなるのである。但し、タイトコーナーで不用意にアクセルを開けた場合は、後輪駆動らしい挙動を感じることを付け加えておく。もちろんFR車であることをほんの少し意識していれば、何ら問題は無い。
ブレーキフィーリングは、すこぶる安心感が高く、止まりたいところで止まりたいように止まれる。コーナリング中のブレーキングを故意に試してみた(一般道であり制限速度+αと申し上げておく)が、リヤが流れることなく姿勢の乱れは軽微で、これならば、不意の割り込みにも落ち着いて安全に対処出来そうである。
乗り味は17インチ仕様であるが、硬めの印象を与え、ボディーのしっかり感がドライバーに伝わるセッティングだ。この辺の味付けは、クラウンが出来るだけ伝えないようにする方向とは明らかに異なる。フーガの足は、速度が増すに従ってハーシュネスがしっかりと抑えられ、フラット感も高まっていく感じだ。この味付けは、しっとり感を伴ったレジェンドとも異なる。こうしてみると日本のなかの高級車であっても乗り味の個性を主張する時代が到来したと言えるわけで、我々の選択肢が増えたことを素直に喜びたい。
最後にフーガの気になるところをまとめると、アクセル開度に対する加速のさせ方は単に鋭すぎるだけでは駄目で高級車らしいまろやかな感覚を伴ったものにして欲しいということ。これとやや関連するかもしれないが、問題はフーガを緩々と走らせる気にならないことだ。むしろ常にアクティブであれと強制されているようでもある。これは、高級車としての資質が問われていることになるのだが、JAGUAR XJは、緩々と走らせて下さいというメッセージがごく自然に車側から発信されている。そして実際に緩々と走らせてみると、不思議に心は落ち着いてくるし、ゆたかさと心地よさが見事に融合した感覚を味わうことが出来るのだ。真の高級車であれば、例え静止していたとしても常にゆたかな寛ぎの空間に身をおく心地よさを感じるものだ。フーガはアクティブな車であることは認めよう。だが、それだけでは真の高級車を名乗ることは残念だが出来ないのである。



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