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March.2004

BMW530i IMPRESSION
(BMW530i試乗インプレッション)

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我々は、新型7シリーズの変貌ぶりに驚かされるも、新型Z4の斬新なボディーラインを見せつけ
られBMWニューデザインを認知するに至ったと私は解釈している。そして、BMWチーフデザイナーであるクリス・バングル氏が次に仕掛けたのが新型5シリーズである。デザインと言うのは、仕掛ける側と仕掛けられる側が常に対峙するわけだが、仕掛ける側が仕掛けられる側の顔色ばかりを伺っていては、決して世間をあっと言わせるデザインは、生まれないのである。よく『いいデザイン』とは?と言う言葉を聞くが、あくまで私見だがデザイナーのフィロソフィーが入魂されているもの、すなわちデザイナーの主張がはっきりと見えるものと言えないか。こうした『いいデザイン』が放つ魔力によって、仕掛けられる側は、無意識のうちに圧倒されそのデザインの虜になってしまった自分自身と対面することになるのである。デザイナーの痛快さは、ここに極まりと言ったところだろう。このように次々に送り込まれる新型BMWの魔力は、強力なブランド力を携えて「賛否両論の巷の声をよそに」あっけなく仕掛けられる側の心を支配してしまうことになるだろう。よほどのへそ曲がりでない限り太刀打ちするのは止めたほうがいい。そして、BMW新型5シリーズのエクステリアは、革新的な深化を表現する使命感に満ちたものでなければならないと捉えると、多少誇張されて演じられたヘッドランプ周りの造形等も又、魅力的に映るのである。個人的には、凛とした自信に満ちたリヤビューがいい。
インテリアについては機能の集約化(iDrive)が図られた為か旧型に比べてシンプルな印象を与える。メータは丸型2眼で運転席から見て左側のスピードメータ内には、燃料計、右側のタコメータ内には、燃費計が夫々組み込まれている。530iのインテリア・トリムは標準でブラウン・ポプラ(鏡面仕上げ)が装備されているが、オプション設定のウェーブ・カット・アルミもチョイス可能だ。(オプションプライスは、ちなみにブラウン・ポプラ:\70,000、ウェーブ・カット・アルミ:\50,000である。)如何なるシチュエーションにおいても冷静さを保つならば、ブラウン・ポプラ(鏡面仕上げ)のままがお勧めか。
新型のディメンションは、4855(4775)×1845(1800)×1470(1435)〔( )内は前モデル〕で前モデルに対して、全長+80mm、全幅+45mm、全高+35mm夫々大きくなった。車両重量は、巧みな軽量化によって前モデルと同じ1590Kgを達成した。軽量化の主なアイテムは、フロントエンジン構造部(サイドパネルとエンジンフードを含む)のアルミ化、インテグラル・アーム式リヤ・アクスルにアルミを採用(サブ・フレームのアルミ化)である。BMWは、アルミと鋼の複合ボディとしたことに対してコストと走行性能のバランスを重視した結果と言っている。オールアルミボディーに固執する事無く独自の発想で目的を達成しようとする所にBMWらしさが光る。BMWの独自性は、標準装備されたAFS(アクティブ・フロント・ステアリング)、545@に標準装備されたダイナミック・ドライブ(アクティブ・シャシー・コントロール)にもよく現れている。AFSはステアリングの回転角度に対する前輪の切れ角を車速に応じて自動制御するシステムである。具体的に言えば低速〜中速ではステアリング操作に対して前輪の切れ角を大きくし、鋭いハンドリングとし、高速では逆に前輪の切れ角を小さくすることによりステアリングの応答性を緩和し、走行安定性を高めている。このシステムには遊星歯車とそれを駆動する為のモータが使われている。このモータの役割は、VGRだけではなくオーバーステア等の危険を感知し、カウンターステアに近い動きをさせる為にも使用されている。(カウンターステアは、最大で6°とのこと)このためDSG(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)が介入するのは、AFSだけではコントロール不可と判断した場合となるので、より果敢にコーナーを攻められる範囲が広がったとも言える。
ダイナミック・ドライブ(アクティブ・シャシー・コントロール)は、フロントとリヤに設けたアクティブ・ロール・スタビライザーを電子制御し、コーナリング時のロールを最小限に抑えるシステムである。(525i,530i:オプション)
こうした新型BMW5シリーズの走りへの拘りを実現させた画期的なシステムがBMWの技術力の高さと独自性を更に強くアピールする好材料となったことは間違いない。このことがBMWブランドの更なるイメージアップに繋がるであろうことは、容易に想像出来る。
ちなみに車両本体価格は、NEW525i:\5700,000、NEW530i:\6750,000、NEW545i:\8800,000である。
前モデルのM-Sportよりも高額となっており、どうしても「高い!」という言葉を誰しも発してしまうだろう。だが、冷静にみれば走りへの新技術が盛りだくさん、技術に裏打ちされたBMWブランドの前に我々は、残念ながら屈服せざるを得ないのかもしれない。





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ROAD IMPRESSION
新型5シリーズに新搭載されたAFS(アクティブ・フロント・ステアリング)は、まさにすぐに体感できるものであった。試乗コースへと僅かにステアリングを動かしただけで、よく切れるという感じが伝わってきた。しかしホンダS2000タイプVのVGSに比べれば、ずっと穏やかである。S2000で体験したVGSは、VGSであることを強く意識しながら運転しなければならないので緊張を強いられた。対してNEW530iの場合は頭の中で極自然に走行感覚のイメージが出来上がると言う感じだ。比較的Rの緩いコーナーをコーナーRに合わせていつも通りに極自然にステアリングを切ると確かにステアリングレスポンスが鋭いことに気づかされるが、特にそれを意識してステアリングの切り角を少なめにしなければならないというような心配は無用だ。適度なレスポンスの鋭さを感じながらのコーナリングは、比較的大柄になったボディーを気にかけることなくファントゥドライブの世界へと導いてくれるのだ。しかもこのAFSは、高いステアリングインフォメーション(路面との対話)能力をも身につけているのでさらに深化した走行感覚を味わうことが出来る。コーナリング時のロール感について言えば、VGRによってロール量が増すのではないかという懸念をよそに非常にフラット感が高いと感じさせるものだった。念のため断っておくが、試乗した530iにはダイナミック・ドライブ(アクティブ・シャシー・コントロール)は装備されていなかった。BMW330i(初期モデル)よりもロール量が抑えられていると感じたのは私だけではないと思う。
次に乗り心地については、ある意味しっかりした高いフラット感の中にしなやかさがあるもので実にいい。このしなやかさは、したたかな乗り味を提供している。これまでのBMWであれば、・・・M-Soptでなければ、BMWといえども満足が行かないと感じたものだが、こと新型BMW5シリーズではノーマルで十二分に満足できる足を身に付けたといえると思う。妙な話しかもしれないが、剛性が高くサスペンションの出来がいい車は、止まっているときにもしっかりと大地に根を下ろしている感覚を伴うものだ。(この感覚はドライバーに冷静さ、安心感、寛ぎを与えるのだ。)見事に新型BMW5シリーズは、この妙な感覚を身に付けていると思う。(皆さんは、感じたことがありますか?audiS6,newJaguarXJ8にもあります。)こうした感覚は、高級車が高級車である為の重要なファクターであると私は捕らえている。要するに高級車を標榜するからには、こうした目には見えない感覚的な要素(いわゆる感性系)までも捉えていかなければならないということだ。
さてアクセル開度に対するレスポンスだが、私の嫌いな(発売当初の330iで体験した発進時の過敏な反応・・僅かなアクセル開度においてさえ同乗者の首が大きく前後に揺さぶられる)発進時の過敏な反応は、しっかりと抑えられていた。いつもこの試乗記で述べている通り、アクセル開度に対する加速感は、極自然でリニアであって欲しいのだ。(こうでなければ、高級車の資格はない。)新型5シリーズは、ZF製6ATの恩恵も多分にあると思うが、発進時の加速感覚には高級車としての資質が備わっていた。このことを私は、高く評価したい。発進後の中間加速においてもBMWストレート6のスムーズでリニアな加速感をアクセル開度とリンクして引き出せるので、ドライバーは、イメージどおりのドライビングを心から楽しめるのだ。
僅か約15分の試乗時間ではあるが、興奮と共に余韻が暫く消えない車が確かに存在する。困ったことに新型BMW530iは、紛れも無くこの範疇に入る車だ。
新型BMW5シリーズの登場までに8年という歳月が流れた訳だが、新型の中身を見れば8年間の開発密度の濃さを思わずにはいられない。カタログにBMWを生み出してきたもの、それは『情熱』とあった。情熱を注ぎ続けた8年間の歳月が妥協を許さない新型BMW5シリーズを創造したことを純粋に感じ取れるところにBMWの凄みがある。このことは、BMW社が紛れも無く世界に唯一を狙うプライドの高い自動車製造メーカーであることを物語っているともいえるのだ。


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